(株)角川グループホールディングス、(株)角川コンテンツゲート、(株)ACCESSの3社は6日、角川グループの電子書籍プラットフォーム「BOOK☆WALKER」向けにEPUB3準拠の電子書籍ビューワの開発に着手し、8月をめどに提供開始すると発表した。 ACCESSのビューワNetFront BookReader EPUB Editionを独自に拡張したものだが、出版社がマルチデバイス対応の独自仕様ビューワを提供することはもちろん、EPUB3を採用するのも初めて。本気で商売をする気なら、これしかない。
独自仕様としては、「角川グループの強みであるライトノベル作品で、イラストがより大画面で楽しめる機能や、要望の多かった、デバイス間の共有しおり機能等」としている。角川グループは、EPUB3作成規程を作成し、現在グループ各社が保有する約5000タイトルの電子書籍すべてのEPUB3対応を推進するほか、BOOK☆WALKER以外の提携電子書籍ストアにも、EPUB3の電子書籍データ提供を行なっていく予定。
いわゆる「縦組・ルビ・禁則」などの日本語組版機能はEPUB3で仕様化され、WebKitでオープンソース実装されたから、出版社が独自仕様のビューワを持つ理由は、(1)標準の機能をフルに使った共通のUI/UXにより最適化された読書体験を提供すること、(2)独自の販売プラットフォームを通じた顧客管理(CRM)とマーケティングを行うこと、が中心になる。つまり、アマゾンその他のオンライン書店に依存することなく、彼らの販売力に期待することができるわけだ。この競争で出版社が負けることはなく、卸価格の交渉で優位に立てる。何よりも読者とのダイレクトな関係を持つことが出来るので、マーケティングの能力も向上させることが出来る。
角川グループは、直近の決算で売上高1,473億円の日本最大の出版事業体となった。前年比5.2%増、経常利益59億円(31%減)、純利益36億円(43%減)の増収減益だが、デフレの渦中にある業界の中で拡大経営を続けている貴重な存在と言える。書籍売上は649億円で、おそらく今期の講談社、集英社、小学館の3社合計を超えると見られている。同社は出版デジタル機構にも出資しているが、機構のサービスは事実上EPUBに対応していない。 ◆ (鎌田、06/07/2012)