E-Bookの国際課税紛争の虚像と実像 (♥)

欧州委員会(EC)はフランスとルクセンブルクの政府に対し、E-Bookへの付加価値税(VAT)を一方的に(印刷書籍並みに)引下げているとして条約違反の審理手続に入ることを通告した。「競争条件を歪めている」というのがその理由だが、ECは2013年まで税率の見直しを行わないことにしており、EUにおけるE-Bookの普及を阻害するものとなろう。日本でも海外サービスへの消費税課税が問題となっているが、国境を越える21世紀の現実とまともに向き合う知恵を、各国の法務官僚に期待しても無理だ。 [全文=会員]

オンライン・ストアが、高率な課税を回避するのは当然で、それは国境を越える。楽天/Koboが日本の消費税を回避できるのは、サービスがカナダで提供されているからだ。利用者の在籍/居住/移動中の国毎に異なる税率が適用されるとしたら…考えるだけでもばかばかしい。デジタル・サービスは起業しやすく、税率も低い国に集中する。米国がeコマースにおいて世界をリードしているのも当然だろう。欧州が域内に立地するプラットフォーム企業にE-Bookに20%近い税率を課するなら、欧州ベースのサービスは絶滅するか、あるいは北米発のサービスにEU並み課税をするという恐ろしく複雑な事態を引き起こす。インターネットに税関でも置くつもりだろうか。

ネット上を移動するデジタルコンテンツは、事実上サービス(無形財)である。市場の拡大に伴って、これは税務当局の重大な関心事となってきた。問題は、この取引に対する課税に関して、米国と日欧の当局の政策は逆方向を向いていることだ。米国では無税化によってオンライン・サービスが発展し、雇用も拡大し事業税収入も拡大するので、オンライン無税化によっても税収が減ることはないと考えられている。他方で日欧などの「輸入国」では税収が減少し、コンテンツ産業も米国に押される。現在問題になっている、国別の格差問題は、10年以上前から問題となりながら、懸案のまま放置されてきたものだ。

楽天がKoboのオーナーとなって日本でのサービスを開始し、アマゾンKindleも立ち上がることで俄かに消費税問題が浮上し、国税当局は海外事業者にも課税する方針で方法を検討しているというが、これと同じ記述は、10年以上前の新聞記事を検索すればいくらでも出てくる。新聞は過去記事をすぐに忘れ、想い出させてくれることもしないが、消去はされていないのですぐに見つかる。要するに、当局者はつねに、出来もしないしやるつもりもないことを言っているだけなのだ。これはビジネスマンの発想ではなく、100年越しでも(給料を貰って)領土を争う外交官の発想だから、あまり影響されないほうがいい。重要なことは、以下の点だ。

  • 国際(米国)水準より高く課税すれば、事業は名目上流出する
  • 国境を越えた課税は不可能である(徴税コストが徴税額を越える)
  • インターネットに税関を設けることは不可能である
  • コンテンツ=サービスからの税収を増やす方法は、それを強くすることである

印刷本とE-Bookに分かれている税率の現状は著しく不合理である。しかしE-Bookは欧州でも普及期に入っており、ルクセンブルクが3%を適用。フランスも7%でそれに続いた。アマゾンやKoboはルクセンブルクを拠点としている。しかし、ECも是正(一本化)の必要を認めているが、2013年までは見直しを行わないという。さらに2015年に計画されている課税方法では、販売者ではなく、購入者の所在地に基づいて課税されることになる。

フランス政府は、ECによって差額分が制裁金として科された場合は支払う用意があると表明しているが、これは元に戻す意思がないというのも同じだ。EUの法務官僚は21世紀に戦いを挑んでいる。事態を悪化させない唯一の正気な解決は、形態を問わず、本に対する課税の「低率での一本化」を認めることだろう。  (鎌田、07/12/2012)

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