フェデックス(FedEx)は、今年4月にGoogleのCloud Printサービスを北米で開始したが、クラウド・サービス事業をさらに拡大し、同社のインタフェースを通じてGoogle Drive、DropboxおよびBoxに置かれたドキュメントの印刷に対応する。アプリ間の文書の移動の手間を省いたことで、とくにモバイルデバイスからの利用が簡単になる。マニュアルなど企業ドキュメントの印刷が想定されるが、E-Bookのオンデマンド印刷(PoD)との距離は限りなく近く、アマゾンのライバルが提携する可能性はきわめて高い。[全文=♥会員]
ユーザーはFedEx Office® Print OnlineのサイトからBox、Google Docs、Dropboxのアカウントにログインし、文書を選択してプリントを指示すると、フェデックスがファイルを移し、印刷指示を生成して遠隔で作業可能にする。アカウントがない場合でも、Google Cloud Print、HP ePrint、あるいはBreezyなどのサード・パーティのモバイルプリント・アプリを使うことで、ストア+プリンタを指定して出力することが可能。
情報媒体としての紙の最大の問題は、更新とハンドリング(保存・管理・配布・コスト)であって、読むことに関しては不満を持つ人は少ない。これまで企業は文書のハンドリングに膨大なコスト(リース、サプライ、家賃、光熱費、時間等)をかけてきたが、これは今後10年間で極小化されるだろう。その一部はクラウド・サービスに流れ、別の一部はフェデックスなどの外部サービスに流れる。キンコーズ(Kinko's)を2004年に買収したフェデックスは、モバイル・オフィス関連サービスを拡大している。Cloud Printと提携したサービスでは、全米1,800ヵ所あまりのフェデックス・ストアにあるクラウド対応プリンタ(HP、Epson、Canonなど)が利用できる。もちろん、印刷された文書は製本されて配送することができる。
クラウド・プリント+配送サービスは、稼働率を高めるために、E-Bookを扱う可能性が強い。それによって価格を下げ、配送のサイクルを下げることができるだろう。発注後数時間で宅配、といったことも可能となる。これは書店で扱うようにすることもできる。しかし、現状のオフィス・ドキュメントの価格では書籍は扱えない。PoDには、それなりのインフラ(プリンタ、製本機などのハードと、用紙などのサプライ、テンプレートなどのソフトの最適な組合せ)とビジネスモデルが必要だ。また、アマゾンのように(在庫管理を合わせた)配送センターをベースとするサービス・アプローチと、書店や図書館、オフィスコンビニをベースとするものの2種類があり、前者は一定以上の印刷単位に向き、後者は1部以上、数十部までのニーズに対応する。現在のところ、出版社は前者を選択しているが、それは取次やアマゾンなどに在庫管理を委ねるということでもある。消費者の細かいニーズに応えるべき小売サービスには後者が向いているが、単独ではインフラを持てない。フェデックスあるいは配送サービスがPoDサービスに進出するかどうかが注目される。 ◆ (鎌田、08/08/2012)