Hiptypeが開くE-Bookアナリティクス新時代 (♥)

データ指向のE-Bookマーケティングのためのプラットフォームを提供するHiptypeというスタートアップが今週スタートする。Google出身のジェームズ・レヴィCEOらが設立したもので、シリコンバレーの有力ファンドY Combinatorなどが出資していることからも注目されている。一言でいえば、Webサイトがアクセス解析に利用するGoogle AnalyticsのE-Book版のHiptypeは、出版社に対し、匿名・集約された利用データを提供する。月額購読制で、ベーシック(読者1,000人以下)が月19ドル、プロ(読者50万人)が同99ドル。[全文=会員]

E-Bookはマーケティングが命

E-Bookと印刷本の最大の違いは、読者と販売者の「関係」が販売後も続くということにある。コンテンツはサーバで管理され、利用履歴から読んだ時間まで記録される。これはマーケティングに使うことができ、現にアマゾンなどは、詳細は不明ながら自在に応用している(といわれている)のだが、出版社はこのデータの利用で大いに遅れをとってきた。ほとんどはデータが利用可能であることを知らず、利用方法も知らなかったからである。Hiptypeはそうしたほとんどの出版社に利用可能なソリューションを提供しようとしている。「データは書籍出版を救う」とレヴィCEOは述べる。

現在、オンライン書店が出版社に提供するデータは、販売額、ダウンロード数、レイティング、レビューだけだが、Hiptypeのプラグインを自社刊行E-Bookに取り付けることで、読者の「読み方」に関する詳細な統計データを得ることが出来る。例えば、教育・児童関係の図書では、子供たちが実際にどの程度読んだかも知ることが出来る。またFacebook Ads APIを使ってFacebook広告と連動することが出来る。データは契約出版社に限定され、第三者に販売・提供されることはない。

Hiptypeベータ版はすでに出版社で利用されており、無料サンプル版のDLが実売に結びつく比率や、購入者の読了率(かなり低い)などを知ることが出来る。Hiptypeはデータに基づく調査研究も進めており、数値を向上させる要素についての分析を行っている。それにより、「売れる本のDNA」が解析され、WebサイトのSEO (Search Engine Optimization)のような対応が、E-Bookでも可能になってくることが期待される。とはいえ、「売れる本のDNA」というコンセプトは誤解を招くものでもある。売れた本の特徴を抽出した企画がベストセラーとなる可能性は限りなく低い、成功した企画は、むしろ企画の盲点をついたものであることが多いからだ。しかし、シリーズ化に適したものは確実にあり、ここ数年のベストセラーは「三部作」構成をとるケースが目立っている(『ミレニアム』『ハンガー・ゲーム』『50シェイズ・オブ・グレイ』)。

最も最近のE.L.ジェームズの官能小説「50階調」(ヴィンテージ・ブックス)は、E-Bookだけで5ヵ月に2,000万ドルを販売している。ランダムハウス系の大手出版社が出したことも意外なら、購入者の多くが女性だったことも意外だったが、ランダムハウスはオンライン・マーケティングに最も力を入れている会社なので、そのあたりの分析も出来ているのかもしれない。 (鎌田、08/01/2012)

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