米国ではアップルと出版5社の「談合事件」の処理が進み、エージェンシー価格制からの移行が確認され始めているが、欧州においてアップルと出版4社が新たに契約を締結したことがEU当局により明らかになった(→ECドキュメント, 9/19参照)。小売業者は、出版社が支払う(1年間の)販売手数料の総額の範囲内で価格引下げを行うことができるという条件はもちろん大手に有利なもので、この冬のマーケティングに反映されることになろう。
このほどアップルと契約したのは、サイモン&シュスター、ハーパーコリンズ、アシェット・リーヴル、ホルツブリンク(マクミランの親会社)の4社。調整中のピアソン・ペンギンを除く5社は欧州委員会(EC)との和解に応じたもので、新条項には出版4社とアップルが委託販売に関する合意を終結することが明記されている。今後2年間、4社はE-Book小売業者が価格を設定し、変更し、値引きすることを妨げてはならないと規定しているが、同時に、小売業者の値引きや販促による価値の総額は、消費者に対しE-Bookを12ヵ月以上販売することで出版社が小売業者に支払う販売手数料の総額を上回ってはならない、とされている。
これにより小売業者は、出版社が支払う(1年間の)販売手数料の総額の範囲内で価格競争に参加することができる。例えばA出版社の小売に対する卸レートが定価の50%とすると、単純に50%まで下げることができるが、値下げの余力はアマゾンやアップルなど大手ほど大きい。市場はもっとダイナミックで、定価18ドルのコンテンツを10ドルで売って1ドルの利幅でも(50万本で)50万ドルを得られるストアと、13ドルで売って5ドルの利幅でも(1万本で)5万ドルしか得られないストアでは、そのパフォーマンス以上の差がついてしまう。強いストアは自社に対するレートを変えることができるし、50万ドルのマージンをさらに戦略的に使うこともできるからだ。オンライン・コンテンツはコストがほぼ一定なので格差は拡大していく。 ◆ (鎌田、09/20/2012)