バーンズ&ノーブル(B&N)は9月26日、Nookタブレット・シリーズの3代目となるNook HDを発表し予約を開始した(→リリース)。7型のHDと9型のHD+の2機種がベースで、それぞれ$199と$269から。画面解像度が向上し、軽量化したのはもちろんだが、新たにビデオストアが開設され、ファミリー機能(個別プロファイル管理)、本と雑誌の立ち読み機能が改善した点が大きい。リリースは11月1日だが、間もなく登場するWindows 8は採用されず、全体としてはマイナー・チェンジに止まった。落ち込んだデバイス販売はこれで回復させられるだろうか。
Nook HDは、7型でKindle HDを凌ぐ1440 x 900画素 (243ppi)のスクリーンを採用、720pのHDビデオを再生する。重量は315グラムでKindleより軽量小型を実現し、1.3GHzのプロセッサによる動画表示速度もKindleを80%も上回るとしているが、iPad 3やNexus 7を含めたベンチマークによる実測スピード比較は今後、第三者によって発表されるだろう。9型のHD+は1920 x 1280 (256ppi) で1080pのHDビデオを再生。重量は515グラムに抑えている。プロセッサは1.5GHz。この仕様で199ドルと269ドルという価格(Kindleより30ドル安く、しかも広告なし)はかなり魅力がある。HD+は「iPadの半分」を売り物にしている。ガジェット好きなら思わず食指が動くのだが。
Nook HDは、低価格タブレットとしてアマゾンに先行することで成功した初代のNook Color、アマゾンKindle Fireと競合して勢いが鈍化したNook Tabletに続いての3代目となる。OSはAndroid 4.0となった。ちなみにE-Inkの専用リーダNook Simple Touchは99ドル、バックライト版は139ドルで販売している。11月下旬には始まるホリデーシーズンは、このNookのフルラインでアマゾンKindleのフルライン(およびアップルiPad)に対抗することになる。アップルが7割あまりを占める市場だが、しばらくは急成長が予想されている。部品価格が下がって製品が安くなるのは、コンテンツ主体のB&Nには好条件だが、スピードが速すぎると体力に勝るアマゾンに差をあけられ、損失を出せばコンテンツ・ビジネスの足をひっぱる。B&Nは今年に入って失速が顕著になった。バックライトのE-Ink製品が供給で躓いたように、今回のHDの場合はハイスペックなスクリーンの供給に不安が残る。
コンテンツ/サービスとデバイスを総合したビジネスモデルを採用するアマゾン、B&N、Googleの3社を比較すると、Prime会員サービスを別としてもアマゾンが圧倒的にリードしている。タブレットのメディア消費で最大のものは、雑誌、ビデオ、ゲームだが、今回ビデオが加わったことでB&Nが不利な点は一つ減った。Wall Street Journalは、しかしB&Nにとっての最大の援軍は、アマゾンの通販のすさまじい攻勢に恐怖してKindleの扱いを止めたウォルマートやターゲット・ストアだというマッキンゼーのアナリストのコメントを紹介している。 ◆ (鎌田、09/27/2012)