英国上半期は電子本の価格競争が市場を牽引

英紙The Telegraphは9月18日、出版社協会加盟会員の数字として、2012年前半の英国のE-Bookフィクションの売上金額が前年同期比188%増と急伸したことを報じた。E-Bookでは児童向けフィクションが177%増、ノンフィクションも128%増で、一般消費者向け図書におけるデジタル販売額は8,400万ポンドと前年同期(30,00万ポンド)の倍以上、デジタルの総販売額は89.1%増の1億4,500万ポンド(≒184億円)となっている。他方で印刷本は0.4%減の9億8,200万ポンド。デジタル比は7.2%から12.9%となった。

ベストセラー98%引きという驚異的な価格

英国のE-Book市場は米国から2年ほどでほぼ追いついたと言えるだろう。英語というインフラを共有するとはいえ、米国市場の動向を見定め、迅速に対応することができた英国の出版界はさすがだ。上記の数字では、むしろ印刷本の底堅さが目につく。数量では3.8%減の2億5,100万冊なので、平均単価は単純計算で3.91ポンド。3ポイントほど上がっている。おそらく利益率は向上したはずだ。E-Bookとの共存とバランスという意味でも成功している。

ではE-Bookの価格については何が起きているか。同日のThe Guardianの記事は、信じられないような価格競争の事実を伝えている。ジェフリー・アーチャー、ジェームズ・ハーバート、ピーター・ジェームズなどの人気フィクション作家の新作は、実に98%引きの20ペンスで売られている(アマゾンおよびソニー)。著者への版権料は小売価格ではなく、定価の12ポンドに対する満額が支払われているから、週1万部を売る人気作家は毎週数十万ポンドの収入を得ていることになる。ピーター・ジェームズ氏はThe Guardianに対し、短期的には魅力的だが長期的には懸念もあると語っている。20ペンスという価格が先例になり、また独立系書店が売上げを失うことだ。

懸念はもっともだが、これまでのところ、E-Bookの平均価格は下がり、それによって売上げは年に2倍のペースで伸びた。フィクションの価格と販売部数の相関は非常に大きい。E-Bookの低価格は新規読者の拡大に貢献しているのである。全体として印刷本のカニバリ現象は起きておらず、消費者は印刷本の価値を認めている。これまでの数字が示す事実を信じるか、情報の「価格と価値」に関する伝統的な黄金律を信じるか、出版関係者は決めかねているようだが、少なくとも著者や出版社が儲かる限りは、事実が優先することになろう。  (鎌田、09/20/2012)

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