米国連邦地裁が9月6日、司法省とアシェット(HG)、ハーパーコリンズ(HC)およびサイモン&シュスター(SS)の3社との間の独禁法違反に関する和解を適法と認めたが、アマゾンはその4日後、HCのE-Bookタイトルのディスカウント販売を始めた。「この価格は出版社が設定したものです」という嫌味なタグは撤去され、希望小売価格(SRP)の表示もない。Kindleの貸出プログラム(KOLL)にもHCのタイトルが登場した。残りの2社も、これに続くと見られている。「合意」3社と「抗戦派」2社(+ランダムハウス)のこの1ヵ月の価格動向からは目が離せない。
生き残るには体力と頭脳、ニッチ市場の開拓…
本件に関して、HCは以下のような声明を発表した。
「ハーパーコリンズ社は、最終審決に基づき、電子リテイラー各社との間で合意に達しました。弊社が前進していく上で、ダイナミックな価格設定と実験こそ重要であると考えております。」
9月11日現在、アマゾン、アップル、B&N、Kobo、Googleの各社はディスカウント販売を行っているが、各社まちまちで、アマゾンは最低レベルを示している。他方でHCはSRPを引き上げた模様で、$12.99であったものが$17.99となっている例がある。同意審決を認めず、控訴審で争う構えのアップルも価格競争に対応しており、新刊ベストセラーは$9.99にしているが、中にはアマゾンより1ドルも安いものがある。これまでアップルのE-Bookでのシェアは10%程度で低迷していたが、アマゾンと競争できる価格に下げることで、シェアは向上するものと見られている。価格競争に必要な余力を持ったアップルの価格競争参入によって、B&NとKoboは苦しくなるだろう。
paidContentが掲載した比較表(9/11)は12点を載せているが、価格は15~45%の範囲で下がった。平均価格は、アマゾンが$8.43、アップルが$9.81、B&Nが$9.57、Googleが$9.91、ソニーが$10.42、Koboは$12.25となっている。アマゾンを100とすると、アップル=116、B&N=113、Google=118、ソニー=124、Kobo=145。これで見る限り、Koboは分が悪い。つねに安い価格を提供するアマゾンは、消費者にとってファースト・チョイスとなるのに対して、その他は、アマゾンと同じか割高となるからだ。アマゾンの優位は強まる形勢だが、そのプレッシャーのもとで生き残るには、マーケティング・インテリジェンス、とくにニッチ市場を育てていくきめ細かいサービスが必要とされよう ◆ (鎌田、09/12/2012)