ランダムハウス社の今年前半の決算は、E-Bookと3,000万部を売ったベストセラー(Fifty Shades of Grey、半分はE-Book)の追い風を受け、前年同期比約20%増の9億4,700万ユーロ(約935億円)という記録的な数字となった(DBW, 8/31)。営業利益も2倍近くの1億2,300万。米国でのデジタル比率は27%で、年間で30%に達するのはほぼ確実となった。紙の好不調に左右されず、デジタルで確実に高成長するという経営方針が、最高の形で実現した。
同社のマルクス・ドーレCEOは従業員に宛てたメールで「当社のすべての部門で目覚しい伸びを示しているE-Book販売は、さらに実書店におけるシェアの拡大によって釣り合いが取れたものとなりました。」と述べている。また、著者にフォーカスした戦略を成功要因として挙げている。これは官能小説『フィフティ・シェイズ』三部作(ヴィンテージ・ブックス)で空前の成功を収めた英国人女流作家E.L.ジェームズ(エリカ・レナード)のことを言ったものだろう。紙とデジタルを同数売ったということは、印刷本の販売に影響を及ぼさず、在庫を最小化し、品切れを生じずに利益率を最大化するという、出版社にとっての理想を実現したことになる。本作の成功についてはさらに分析が進むと思われるが、ファンフィクション(Twilightシリーズ)から派生したものであること、米英の主婦層の間でSNSを通じて広がったものであることなどが注目されている。
米国におけるデジタル販売比率は前年同期の20%から7ポイント伸びて27%に、世界販売でも22%となった。米国で27%というのは、ライバルのアシェット社の12年前期の数字と同じ。少なくともこうした大手は30%をクリアし、次のマイルストーンである「2015年に50%」へと進むことは確実だろう。 ◆ (鎌田、09/06/2012)