アップルは10月23日、予想通り7型 iPad (mini)を発表した。11月2日という発売日も、スペックも価格も予想通りというものでサプライズはまったくなし。しかし、メディア・タブレットの市場において持つ意味は小さくはない。ティム・クックCEOは、アップルが先週1億台目のiPadを販売したと述べたが、iPhoneに続き、アップルの世界は2つの焦点を持つ楕円のように歪んでしまった。しかしわれわれにはiBookが縦組を含む日本語をサポートしたことがニュースだ。
iPadでないiPadの矛盾
'Every inch an iPad'(どこをとってもiPad)というのが新製品の標語だ。ほんとうにそうだろうか。スティーブ・ジョブズの描いたタブレットのUXは、7型では実現できないものだった。そしてそれは唯一でなければならなかった。iPhone 5でアップルの4:3という「アップルの黄金比」は終わり、miniによってiPadはサイズの唯一性をなくした。個々の製品は悪かろうはずはないが、デザイン・アイデンティティが失われた。短期的には市場に歓迎され、投資家は満足するだろうが、デザインの一貫性という点では重要なものを失ったように思われる。
新製品は7.9型でXGA(1024x768)のスクリーンを採用し、チップセットにA5を採用するなどiPhone、iPadの使い回しでコストを下げている。価格は$329。308gで7.2mmという軽量・薄型で、カメラはフロントとリアに1個づつ。アマゾンやGoogle(その他の7型廉価品)とは競合しないが、むしろ上位のiPadと競合する。「片手で持てるiPad」というようにポータビリティが向上したので、パーソナル・ユースとしてむしろ上位製品をしのぐ人気となる可能性は十分にある。そうならないように(?)、スクリーンはXGA、RAMは512MBに抑えられている。つまりminiはあくまでminiで、勘違いしないように、というのだろうが、これに納得する消費者はいないだろう。遠くない将来にパワーアップされる、と期待する。そうした矛盾が多くの可能性を秘めたこのサイズの製品の足を引っ張るだろう。
この日発表された中にはminiばかりではなく、iBooksアプリの改良も含まれていた。連続スクロールモードが導入され、本文中の一節を選んでTwitterやFacebookで友人と共有する“2.0”的機能が使えるようになった。そして縦組を含む日本語と韓国語その他多くの言語が初めてサポートされた。クックCEOによれば、iBookstoreのタイトル数は150万点で、サービス開始以来4億ダウンロードがあったという。◆(鎌田、10/24/2012)