Sourcebooks(イリノイ州ネイパービル)10月2日、古典文学の読書体験を深める教育的拡張E-Book、'The Shakesperience' シリーズをリリースし、『ハムレット』『ロメオとジュリエット』『オセロ』の3点をiBookstoreから発売した(価格は各$9.99)。古典/演劇教育のための対話的コンテンツを開発するプロジェクトとして生まれたもの。シェークスピアの戯曲を中心に、厳選されたテキストとビデオ、オーディオ素材で構成され、iPadの先進的UIで操作することができる。ほかの戯曲タイトルも順次発売され、また教育現場での経験などをフィードバックして、改訂もされていくという。
ソースブックスのドミニク・ラッカーCEOがPublishers Weeklyに語ったところによると、シェークスピアを現代のオーディエンスや学生に紹介する手段である ’Shakesperience’(シェークスピア体験)は、著名な研究者や王立シェークスピア劇団を含む演劇人、学校教師らとの交流、協力を通じて開発されたという。ビデオには過去、現在の名優の演技が収録されており、それだけでも貴重なもの。膨大かつ貴重な素材を集めているだけに許諾をもらうのに2年を要したという。愛好家はもちろん夢中になるだろうが、教育者と学生に影響を与えられたらもっと嬉しい、とラッカーCEOは語っている。
あまりにも有名なシェークスピアの演劇作品だが、非常に複雑多様な性格を持っており、とくに独特の言語空間を楽しむようになるのは簡単ではない。’Shakesperience’は、原文、朗読、舞台上演、映画、音楽、インタビューなどの素材を巧みに組合わせて構成され、シェークスピアとその作品世界の魅力、アクセス方法を紹介している。映像を使ったものとしてはBBCのドキュメンタリーなど優れたものがあるが、時間とともに流れる映像では対話性がないので一つの見方しか伝えることができない。考える暇と、自分で調べられる環境を提供するには、構造をしっかりつくっておく必要がある。例えば『オセロ』の用語集は1,400の用語を定義している。一つのシーンが解釈の違う演出と演技で様々に表現されるスリルを味わうことができる。しかし、ラッカーCEOによれば、数多くのビデオが収録されているが、受動的になるビデオよりテキストと同期した朗読のほうが学生を原文に集中させる上で有効、と教師は考えているという。
「三大作品に続くリリースは順次行われ、またフィードバックを得ながらコンテンツの組み換えも順次行っていくという。つまり固定したコンテンツではなく、あくまで「体験」プロジェクトだということだ。この体験のアーキテクチャは、おそらくギリシャ悲劇から近松などにも適用できると思われる。 ◆ (鎌田、10/04/2012)