ブルームバーグ・アプリストアのエコシステム志向

大手金融情報サービスのブルームバーグ社は11月13日、同社の契約者向けにBloomberg App Portal (BAP)というアプリ・ストアを開設、45点のアプリの販売を始めた(→リリース)。推定で売上の30%をシェアするというふつうのストアだが、重要なことは、データインフラと強力なアプリを保有する巨大な情報サービス企業が、外部アプリ開発企業にデータを無償提供するパートナーシップ・モデルを採用したという点だ。素材としてのデータの販売と、自社による分析だけでは、データの価値を最大化するには不十分だということを意味する。ブルームバーグはエコシステムを志向している。

BAPには、ソフトウェア企業、金融機関、大学その他サードパーティが開発した45種以上の金融・投資関連アプリが並んでいる。内容は、データ分析、ニュースとリサーチ、ポートフォリオ管理、リスク分析、価値評価と価格動向、データ・グラフィックスと技術的分析など。景気低迷で金融市場が冷え込む中で、ブルームバーグは独自のエコシステムを構築して攻勢に出ようとしている。同社は現ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ氏が1981年に創業して以来、不況期を踏み台にして成長してきた。金融情報サービス企業の中では最もIT(=イノベーション)志向が強い

ブルームバーグはこれまで法人向けに1ライセンスあたり年間約2万ドルでデータを販売している (Bloomberg Professional)。そこまではトムソン・ロイターと同じだが、同社はBloomberg Anywhereという独自のモバイル端末の展開を開始し、主力商品Bloomberg Nextのモバイル版を提供して個人ユーザー拡大にも取組んでいる。2009年にはマグロウヒル社からBusiness Weekを買収、2011年には行政・司法情報出版社として有名な Bureau of National Affairs, Inc.を約10億ドルで買収、ソフトウェア企業も買収して拡大を続けている。

ブルームバーグ氏(写真左)は電気工学科を経てMBAを取得した秀才(Johns Hopkins→Harvard)で、今はなきソロモン・ブラザーズではシステム開発を担当した経験も持つ。ひと世代上で政治家志向など性格はまるで逆だが、ビジネスのスケールと発想スタイルは、同じウォール街出身のジェフ・ベゾス氏と、よく似ている。つまりテクノロジー+(プラス)データのプラットフォームをベースにエコシステムを構築し、既存のサプライチェーンを統合・再編するということだ。金融とビジネス、政治・経済は本来ひと続きのものであり、デジタル時代には情報サービスと出版、新聞、雑誌、TVなど「メディア」の違いなど意味を持たない。もちろん国境も。  (鎌田、11/15/2012)

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