米国最大手の書店チェーンBarnes & Nobleは12月20日から5日間限定で、価格統制から離脱した大手出版社のベストセラー本を含む20点について、1冊買えば別の1冊をギフト用に無償ダウンロードできる店頭販促キャンペーンを展開した。新しい契約によって卸販売が可能になったことで小売価格が自由化され、店頭での創意工夫が生きる環境が生まれたが、その機会を最初に使ったのはアマゾンではなくB&Nのリアル書店だったということになる。
リアル書店+E-Bookという強味
「1点買えばもう1点はタダ」というのは、なじみ深いキャンペーン手法だ。人気商品でないとインパクトが弱いので、ベストセラー本を並べないと注目を惹かない。B&Nの今回のキャンペーンの対象20点の内訳(paidContent, 12/20記事参照)は、大半が「ビッグシックス」系のタイトルで、来店勧誘・消費誘発効果が高いと思われる。これは書店来店者限りの特典で、オンラインストアは通常の価格で販売されている。つまり、アマゾンの価格検知アリゴリズムも対応できない。購入者はレジでメールアドレス(購入者と被贈者のNookアドレス)を教えればその場で相手に通知が行くが、本人に直接手渡しするためにギフト受領書(アクセスコード付)をもらうこともできる。
B&Nは先月から米国最大の人気作家ジェームズ・パターソンの本で、同種の店頭販促を行っており、“インスタント・ギフト”はその拡大版と言える。つまり、サービスのためのシステムを構築し、運用と効果測定などを行ったうえで本番をクリスマス前後の5日間に設定したわけだ。paidContent (11/16)が注目しているのは、(1) B&Nが著者、出版社と良好でユニークな関係を持っていること、(2) 印刷本とE-Bookの組合せなど、書店内販促のバラエティを増やせること、(3) 店舗用システムをE-Book販売用に拡張したこと、などである。もともとB&Nは店頭システムに強く、それで一大帝国を築いたのだが、その開発力が復活したとすれば喜ばしいことだ。<アマゾンと対抗できるとすればリアル書店+E-Bookだけ>という認識が広がりつつある中で、B&Nがその力に目覚める時が来たのかもしれない。 ◆ (鎌田、12/27/2012)