ケンブリッジ大学図書館は、昨年末に公開して話題を呼んだアイザック・ニュートン・ペーパーズに続き、秘蔵の初期キリスト教文書を含む2万5,000ページに及ぶ所蔵文書のデジタル版をDigital Libraryで公開した。約2000年前のユダヤ教聖書(ナッシュ・パピルス)や、数奇な運命で有名な6世紀のギリシャ語新約聖書(コデックス・ベザエ)、スコットランドのゲール語聖書(ディアの書=写真)など、どれをとっても歴史的価値の高いもの。『エドワード証聖王の生涯』(13c)のように、彩飾や絵が入ったものもあり、グーテンベルク以前の書物の世界を垣間見ることができる。
今回のリリースは、2010年にポロンスキー財団のInternational Digitisation Projectの一環として150万ポンドの寄付が行われたことにより実現した。同プロジェクトは人類史上の稀覯書物を集めた電子図書館として企画されており、オクスフォード大学ボドレー図書館、バチカン図書館などで関連作業が進められている。現在のステージでは「信仰の礎」「科学の礎」に関するコレクションにフォーカスされており、昨年のニュートン文献の公開で一躍インターネットの世界で知られるようになった。注目されることで一般からの寄付を誘発することを期待している。目指すのはアレクサンドリア図書館の電子版だ。
冒頭に挙げた以外の文書としては以下のようなものが含まれている。
カイロ・ゲニザ:9世紀から19世紀にかけて、カイロのユダヤ人コミュニティによって書き継がれてきた膨大な文書コレクションで、大部分が古代地中海世界の共通語であるアラム語でヘブライ・アルファベットを使って書かれており、歴史学、聖書学などの第一級資料。分散して所蔵されているが、ケンブリッジ図書館は徐々にデジタル化し、公開していく。
アラビア/サンスクリット文献:最初期のコーラン、大乗仏典、ブラーフマナ哲学文献などを含む古代インドの宗教文献。
最後に、レナード・ポロンスキー博士(米国生まれの元実業家、大富豪)のコメントを紹介しておきたい。「私の願いは、知識と文章表現における世界遺産を可能な限りオンライン化し、万人に開放することで知の民衆化を支援することです。」 ◆ (鎌田、12/18/2012)