E-Bookプラットフォーム市場のシェアでKoboが上位に来ることはまずない。NookやSonyまでで、あとは「その他」であることが多い。フランスはアマゾンが参入して間もないのであまり参考にならない。しかし、何事にも例外はあるもので、カナダだけは堂々と先行したアマゾンと張り合って圧勝している。Koboの母国とはいえ、なぜそんなことがあるのか。MobileReadブログでscrapking氏が述べていることはかなり説得力があるので紹介しておきたい。
カナダでは後発のKoboがKindleを圧倒
カナダ人の80%はアメリカとの国境から200km以内に住む。東京から200km圏といえば焼津あたりだから、そんな距離に住んでいて独立した市場圏を維持するのは困難だろう。ましてオンラインである。まして後発だ。Kindleに遅れること2年、ソニーReaderにも同様。それでいて現在の推定シェアは55%と推定される。量販店の広告カタログでも、Koboの露出量はアマゾンやソニーを圧倒している。それも大方の量販店が一致している。カナダの消費者(と量販店)の大部分がKoboを強く支持しているのは明らかだろう。
scrapkingの見方は、在来型書店とのパートナーシップの成功こそが鍵であったというものだ。ソニーは家電流通の実績を背景にFuture Shopなどのテックストアと提携して当初はかなり成功した。しかしインディゴという強力な書店・CDショップチェーンを背景に設立されたKoboは、急速に先行者を追い詰めることができた。コンテンツの流通はデバイスの流通よりはるかに強力だった。これはかなり説得力のある説明だ。B&Nを持たないNookはIndigo+Koboの敵ではなかった。本を買いに来た客はE-Readerにも目を向けるが、ガジェットを買いに来た客にE-Readerにも目を向けさせるのは難しい。
書店とのパートナーシップはKoboの基本戦略であり、アマゾンとの差別化ポイントだ。フランスやラテン圏ではそれが成功し、FNACと組んだフランスではKindleをおさえてトップにあるという。残念なのはフランスのE-Book市場がまだ小さいことで、出版界を覆う保守主義は日本と比べられるものだ。日本でも書店を重視しようとしたが、紀伊国屋や丸善、TSUTAYAなどの大型店の強力な支援を受けるには、スタートが遅すぎたし、そもそも書店側がメリットを感じていないようだ。Koboが日本の楽天の傘下に入ったことは、今のところ影響を与えた兆候はない。しかし、書店+電書のパートナーシップを母国以外で機能させるのが簡単でないのは確かだ。
印刷本を売る書店と電子本を専門に売るオンラインストアは競合しない。本誌が強調してきたように、コンテンツが同じでも商品カテゴリーは(乗用車と貨物車のように)別のものだからだ。しかし、顧客は同じなので異なる業種の企業がシェアするのは簡単ではない。競合しない以上、書店が電書を躊躇する理由はないどころか、売らないのは自殺行為に等しいのだが、仕入をしない日本の書店は大手取次のショールームのようなものなので、独自の判断を回避している。その点で顧客に対して(新本、電書、古書まで)一貫したサービスを提供するアマゾンが有利になる。Koboの書店重視は方向としては正しいが、それだけではカナダ以外でアマゾンに勝てるものではないと思われる。◆ (鎌田、12/06/2012)