“重力圏”離脱に苦闘する米国電子雑誌

米国の雑誌購読者の動向をフォローしているGfK MRIの四半期レポートによれば、紙と電子を含めた春から秋の購読者総数の変化が1.6%増の12億人だったのに対して、雑誌電子版は47%(440万人)増えて1,350万人に達した(Ad Week, 11/30)。紙がほぼ現状維持なのに対して、デジタルの増加が目立っている。とはいえ、まだデジタル比率は2%に満たず、本に比べて異常なほど普及ペースは遅い。もう一段のブレイクスルーが必要なようだ。

デジタル読者がとくに目立つのはESPN The Magazineで96.7万部。WebMDが76.7万部、Food Network Magazineが54.1万部。ESPNはデジタルだけが健闘。Foodは紙も伸ばしている。Bon AppétitとCooking with Paula Deenも含め、料理・食材雑誌は特に好調で、デジタルとの相性の良さが認められてきたようだ。The Atlantic、Time、Wired、New Yorkのようなオピニオン誌、自動車・バイクなどの専門雑誌も好調。それに対して女性誌はかなりの落ち込みで、ニューススタンドも電子も悪い。これは不況の影響か。

E-Bookの場合は100%以上の成長を4年以上続けて、ようやくスローダウンさせ始めたが、電子雑誌はまだ高成長局面を経験していない。本と雑誌とはまったく違うメディアであることがよく分かる。フォーマットやデバイスへの依存の問題も、雑誌の場合はE-Bookとは違った意味を持つのは、広告の問題も絡むからだ(HTML5についての別掲時事参照)。そうした意味で、Economist誌などがタブレット版の購読から印刷版を切り離した措置は注目される。これまで、紙と電子の年間購読はバンドルされることが多かったのだが、広告収入の低迷からコスト高を招き、継続が困難になってきた。ハースト社やコンデ・ナスト社はアプリを切り離して販売している。

Economistは、①紙単独、②電子単独、③併用、の3種類を別々に商品化した (Ad Age, 11/30)。これまでの経験から、ニーズは3通りあることが分かったという。①、②は127ドル、③は年間160ドル。従来③が127ドルだったのでかなりな値上げだ。印刷版は減少し、コストは上昇していることに対応したという。同誌によれば、全体として購読者は増加しており、電子単独がとくに順調なようだ。紙に対して電子をバンドルするという関係から、電子に対して紙をバンドルするという関係に移行することを見越しているようだ。この雑誌は広告中心でないので、購読料は死活にかかわる。つまり日本の新聞と同じような性格を持っている。この問題はまた別に分析してみたい。(鎌田、12/06/2012)

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