フォレスター・リサーチは12月19日、米国とカナダの消費者6万人を対象とした「消費者とテクノロジーの現状」に関する年次レポート(有償)を刊行したが、TechCrunchが重要な数字を要領よく紹介しているので、チェックしてみたい。スマートフォンとタブレットを中心としたモバイルデバイスの普及がライフスタイルをどう変え、メディア・ビジネス何をもたらすかを考えるうえで、米国市場は巨大な実験環境だ。2012年はタブレット普及率20%に達したが、この数字の読み方は簡単ではない。
オンラインの浸透率は総人口比79%で前年比横ばいだったが、2011年には少なくとも月1回アクセスしている成年人口が78%だったのに対して、2012年には少なくとも84%が毎日1回アクセスしていた。アクセスの内容が一変したわけだが、原因はもちろんモバイル(スマートフォンとタブレット)の普及だ。PC時代と比べるとオンラインは確実に生活の一部になった。米国の成年オンライン人口の約半数がスマートフォンを所有し、うち3分の2は複数台所有している。タブレットの普及は19%に達した。
他方、TVからWebにアクセスしている人も43%おり、主流はゲームコンソールで(42%)、ネットTVは19%、Apple TVのようなセットトップ・ボックスの利用者は14%。年齢層別でみると、18-23歳の青年層では70%が毎日SNSを利用、24-23歳ではタブレット(25%)、スマートフォン(72%)の保有が最も高く、33-46歳ではオンライン消費が最も活発(3ヵ月で全体平均の$449に対し$561)。中高年(46-67歳)と老人(68歳+)ではモバイルの利用率は低くなるが、それでも14%に達している。
誰が何に、どう使っているかが問題
フォレスター社のデータについて、The Digital Readerのネイト・ホフェルダーが面白いことを言っている。ピュー・リサーチの今年初めの調査で、タブレット保有率が(11→)19%という数字を発表していたのを思い出して、もしかすると米国でタブレットが売れているのは、同じ人間が買い換え、買い増しているだけなのかも知れないというのだ。これは重要な指摘だ。タブレットは消費され、積んでおかれる可能性が高い商品だ、「愛用」される可能性は少ない。ピュー・リサーチは来年2月にはこの1年の変化を反映した数字を発表するので、そこで保有率と出荷台数の相関が明らかになるだろう。PCなどに比べて価格が安く、ユーザーのライフスタイルと密接なタブレットにおいて、出荷=普及を意味した時期は比較的早く終わりつつある可能性は高い。
他方で、専用E-Readerも複数保有の時代になっているが、こちらは本が詰まっているし、1年以上前のモデルでも使い勝手に不満は少ない。現にタッチ式以前のKindleも相当数が使われていると推定される。出荷台数の急減速から、専用E-Readerの消滅を予想するレポートが目立っているが、コンテンツ・ビジネスの側からメディア・デバイスを考えるとすれば、誰がどう使っているか(いないか)に注目すべきで、単純な数的比較からタブレットE-Inkリーダの重要度を云々するのは適当でないということだ。◆ (鎌田、12/27/2012)