アマゾンがアプリ内決済をマルチデバイス対応 (♥)

アマゾンは1月22日、ゲーム開発者が、アマゾンのアカウントを使用したアプリ内決済を容易に利用できる機能をDigital Games StoreのIAP (In-App Purchasing)に追加したことを発表した(詳細はこちら)。これにより、マック、PC、Web、Android、Kindle Fireを含む複数のデバイス・プラットフォームを使用するゲームにおいて、数百万人のユーザーを有するアマゾン・アカウントでの課金・決済処理が可能になる。「決済だけでもアマゾン」で“脱OS依存”を促す戦略だ。[全文=会員]

決済プラットフォームの“脱OS依存”

オンラインゲームにおいて、アプリ使用中の少額決済機能は必須であるが、OSに組み込んだアップルが先行している。アプリも決済もOSに依存させるのがそのスタイルで、モバイル市場でのiOSデバイスのシェアをベースに安定した基盤を構築してきた。Google PlayはAndroidデバイスに対して同様なアプローチをとり、これも同様にシェアを伸ばした。技術的には最も容易だ。これに対してアマゾンのアプローチは、アマゾンの通販アカウントをベースとする、同社独特のものだ。技術的には難しいが、アマゾンは顧客に対して、アマゾン・アカウントの有効性、汎用性を最大化し、開発者はOS毎の違いや変更を気にすることなく、アマゾンの決済サービスだけを利用できる。ちなみに、IAPは書籍や雑誌を販売する際にも有効な手段となる。とくに無償のサンプラーの中から有償コンテンツを購入する機能を使う場合に便利だ。マルチプラットフォームIAPを使えば、文献リストもオンライン・カタログ(アマゾンからすればアフィリエイト)になる。コンテンツに広告モデルを導入しやすくなるだろう。

  • アマゾンのIAPの利点は次のように説明されている。
  • ユーザーが持つ既存のアマゾン・アカウントを利用して決済可能
  • 実証済のアマゾン・セキュリティ技術による詐欺防止機能を利用可能
  • 世界的に先進性を評価されているアマゾンのCustomer Serviceを利用可能
  • 顧客への商品情報提供からマーケティングまでをサポート(ベストセラーリスト、推薦、キャンペーンなど)

アマゾン依存を進めるプラットフォーム戦略

IAPに関して、アマゾンは、Kindle Fire、Appstoreから始めてあらゆるモバイルデバイス、PCなどに拡大したことになる。アマゾンの決済手段は、eコマースにおいて最も柔軟性がある。つまり各種クレジット・カード、ギフト券、コンビニ決済などの中から選べるので(クレジット・カードにしか対応しない他社に対して)有効性が高い。技術的コストは高くなるが、配送サービスと同様、この投資によって利用件数の拡大と新規顧客の獲得が閾値を越えれば利益に転換する。

アプリのトレンドは、“脱OS依存”(Web化)となっており、アプリの実行環境としてのOSは相対化されつつある。モバイル市場での二大陣営の対立構造が明確になるほど、逆にOSからの遠心力が働くのは、雑誌や新聞でも見られる。OSに依存するとコンテンツ/アプリの開発コストが倍以上になり、さらにメンテナンスも面倒になる。さらに決済が絡むと、複数のOSをサポートするコストはメディアのビジネスモデルの構築を困難にするほどだ。その分、決済/アカウントの中立性というアマゾンのソリューションは魅力的になるだろう。通販においてロジスティクスをプラットフォームとして開放するアマゾンは、コンテンツにおいては決済プラットフォームを開放することで同様の効果(顧客当たりの取引・売上の最大化)を達成しようとしているわけである。

また、この拡張は、Amazon Web Services (AWS)の構成要素であるAmazon S3、Amazon Dynamo DBなどをバックエンドとし、Whispersync for GamesやGame Circle(ゲーム用ユーティリティ)やテスティング環境までの一貫した環境の一部でもある。大規模な投資をせずに本格的なオンラインゲームを構築・提供できるので多くの開発者から歓迎されるだろう。 (鎌田、01/24/2013)

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