アップルが「Appstore」使用差し止め訴訟で敗訴

Appstoreの名称の使用に関してアップルがアマゾンを商標権侵害と不公正競争で使用差し止めを求めて提訴していた件で、カリフォルニア州オークランドの合衆国地区裁判所のフィリス・ハミルトン判事は、根拠を認めずこれを却下する判断を下した(Bloomberg, 1/3)。アマゾンにとってはささやかな勝利。消費者にとってはどうでもいい話だが、潤沢な資金を背景に商標や特許で訴訟を仕掛けてきたアップルの戦略は、ひとつの転機にきたといえる。

アップルがAPP STOREサービスを開始したのは2008年。アマゾンがAmazon Appstore for Androidを始めたのは2011年3月だが、Appstoreを一般名称と考えるアマゾンに対して、アップルは、消費者にアップルのストアと誤認させることで得べかりし利益を生じたと主張していた。ハミルトン判事の判決は「証拠がない」という常識的なものだった。アップルは2008年に特許庁にAPP STOREの商標を申請していたが、マイクロソフトが異議を申し立てて保留となっている。判決によって商標性が否定される可能性が高くなった。アップルはサムスンの「ギャラクシー・ネクサス」の販売差し止めを求めていた特許訴訟でも巡回控訴裁で完敗(全会一致)しており、UIや名称で広汎な「マインドシェア」を得るという戦略は後退を余儀なくされている。

イノベーションをアイデンティティにすることは難しい。イノベーションとは自己革新を意味するのだが、過去の成果への愛執はそれとはほど遠いと見られるからだ。それに創造が模倣の上にしか生まれないことは、クリエイティブな人間ほどよく知っている。アップルの名前はビートルズから、マックのUIはゼロックスから拝借した。それは悪いことではない。著作権、商標権、特許といった知的財産権は、無条件に保護されるものではない。何よりも、やりすぎれば創造に不可欠な自由な精神を縛ってしまうという副作用が大きすぎる。それは「第二のアップル」の可能性を奪い、アップル自身のイノベーションをも困難にする。世界一リッチな弁護士軍団に護られるリッチなアップルを、消費者はいつまでも支持しない。 (鎌田、01/10/2013)

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