波乱の第2ラウンドの予感:B&N/Nookの失速 (♥)

B&Nの決算発表は、予想どおり惨憺たるものだった。書籍市場が最も活況を呈する年末、あらゆる小売店が赤字からの挽回を期待するこの時期に、書店もWebサイト (BN.com)も、Nookデバイスも揃ってダウンしたことは衝撃を持って受け止められている。この傾向が続けば、アマゾンに次ぐナンバー2の地位はおろか、事業の継続性にも疑問符が付く。もしかすると、大手出版社が卸販売制への回帰を進めた結果、価格競争が進み、消費者のアマゾン選好が強まったのかも知れない。だとすると、シェアの変動も予想される。[全文=会員]

なぜ1割も売上がダウンしたのか

年末9週間の小売部門の売上は、10.9%減少し12億ドル、E-Reader、タブレット、コンテンツを合わせたNook事業全体で12.6%ダウンの3億1,100万ドル。トラフィックも落ちた。デジタルコンテンツだけは13%増だったというが、逆に言えば、評価の高かったデバイス新製品の不振がそれだけ大きかったことになる。ウォール街のアナリストたちは、中期的なシェア低下を懸念している。このホリデーシーズンは、独立系書店も前年同期比で8%売上を高めたと推定されており、紙と言わず電子と言わず、不振はB&Nに特殊な現象と言える。マイクロソフトと提携し、年来の課題だった海外展開に向けて英国にも進出した。リンチCEOは「原因を究明している」と語っているが、簡単に説明はつかないようだ。つまり相当に根は深い。

しかし、単純な話、Windows 8との相乗効果は不発だった。マイクロソフトはこれまでに6,000万ライセンスを販売したとCESで発表しているが、月間に2,000万というペースは「Windows 7並み」ではあっても、デスクトップとモバイルにまたがる大OSにしてはインパクトは弱い。Nookの販売にはまったく貢献しなかったと思われる。英国進出にしても、遅すぎた事業開始でアマゾン、Koboを追撃する体制には程遠かったから、今期の数字には反映させられなかった。しかし、追い風なしでも、業界平均の数字は出せたはずだし、少なくとも昨年並みの数字は出せたはずだ。したがって、かなり深刻な事態が進行している可能性がある。すなわち、顧客の不満から他社にシェアを奪われるということだ。

筆者は一つの可能性として、大手出版社が固定価格制から離脱し、書店との契約を結び直し、3年ぶりに大手刊行物の価格競争が再開したことが理由になったかも知れないと考えている。固定価格は、B&Nが10%台のシェアを固められた要因と言われていた。だとすると、さらにアマゾンの寡占が進んでいる可能性もある。アマゾンの決算発表を待ちたい。いずれにせよ、シェアの減少が続けば、B&Nの先行きは暗くなる。TeleReadのダン・エルドリッジ編集長は、(1) 教育分野などに転換する、(2) アマゾンやGoogleの餌食になる、という2つの可能性を予想している。

プラットフォーム・ビジネスの再編は必至の形勢

デイヴィッド・ウォーガン氏はTeleReadの記事で、デバイスとストアの二本建てのビジネスモデルを展開するアマゾン、アップル、B&N、Google、Kobo、サムスン、ソニーの計7社をプレイアデス星団(昴)に因んで「七人姉妹」と呼んだ。現実的に考えて、姉妹のライバル関係は強く、7つは多すぎる。デバイスとストア関係の強弱からいって、B&NとKoboが独自デバイスを維持することは難しいだろう。いずれにせよ、フォレスター社のアナリスト(ジム・マッキヴェイ氏)がNYタイムズで述べているように、問題はNookデバイスがいいとかではなく、消費者がKindle、iTunes、Nookのライブラリのどれを評価するか、ということだ。Nookストアの「読書体験」はあまり評判が芳しくなかった。ジョアンナ・キャボット氏は、B&Nの失敗の原因について、データ解析だとかマーケティング技法といった高度なことではなく、グローバル化する世界の中でも、あまりにアメリカ偏重なせいだ、と述べている (TeleRead, 1/5)。ちなみに彼女はカナダ在住だ。

かねてB&NにとってNookデバイスは重荷であると主張していた The Digital Reader のネイト・ホフェルダー氏は、もはや売却(救済的買収)しか方法はないと考えている(1/3)。マイクロソフトやピアソンから五月雨的に出資を受けるのでは足らず、アマゾンに対抗するプラットフォームとして必要な世界展開、多言語展開を支える資金力を持ち、B&Nの書店事業との連携を生かせる柔軟性を持ったパートナーがいれば、Nook Mediaの顧客ベースは十分に価値があるものだ。アマゾンやアップルを相手にシェアを減らすのは容易だが、高めるには資金と技術とマーケティングを総動員しないとできない。E-Book事業、あるいはデジタルコンテンツ事業は、すでにそうしたスケールになっている。

Nookの売却先を素直に考えれば、それは7人姉妹の中のどれかだろう。ソニーにこの事業を継続する意思があれば絶好の機会なのだが、現状では考えにくい。楽天にも動機はあるがKoboへのコミットが中途半端なので期待は薄い。結局、潤沢な資金と飽くなき野望を有するサムスンか、あるいはリバティメディアのような大手メディア・グループということになる。最悪のケースは、3年前のように、親会社がハゲタカ・ファンドの買収攻撃を受ける事態となることだ。

2012年の米国市場は、爆発的成長期から安定期に移行し、また委託販売制が否定されるなど大きな変化があった。B&Nの失墜が構造的な要因によるものだとしたら、昨年が大きな転機だったということになるだろう。 (鎌田、01/10/2013)

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