英国のクリスマスは印刷本を祝福

英紙ガーディアンは12月29日、英国における印刷本週間販売部数がクリスマス直前の週(16-22日)で、過去3年間の最高を記録したことを報じた(Zoe Wood, 12/29/2012)。有名人による大型ベストセラーに支えられたもので、前の週から20%も増加し7,540万ポンド(約105億円)となった。前年同期比では2%弱の増加で、2009年の水準に戻しただけだが、E-Bookに侵食されたと考えられていた印刷本の販売が「意外」にも復活したという印象を与えているようだ。

ジェイミー・オリバー(Jamie Oliver)の料理本、ミランダ・ハート(Miranda Hart)のコミック本、それにブラッドレー・ウィギンズ(Bradley Wiggins)の回想本がギフト用の人気タイトルとなった。英国では米国を追う形で急速にデジタル化が進み、昨年は20%あまりに達したと考えられている。タブレットやE-Readerの売れ行きから、この冬は出版業界関係者が最も懸念していたもの。戦記物で知られるアントニー・ビーヴァー氏(Antony Beevor)は、不況と構造転換で苦境にある出版界を勇気づけた、と述べ、歴史家で作家のウィリアム・ダーリンプル氏(William Dalrymple)は「本物の本の反撃」と讃えた。

しかしビーヴァー氏は同時に「問題は正統派の(serious)フィクションの数で、かなり落ち込んでいるのが懸念される。それはすべてのまともな本についても同様だ」と指摘している。とくに有名人の著書で印刷版が売れるのは、デジタル版ではカットされている写真が多いためではないかと考えている。オリバーの『15分クッキング』は1週で14万部を売って独走しているが、これはその例だ。ベスト5には前記3点のほか、ギネスブック2013年版と、映画化で復活したトールキンの『ホビット』(約7.3万部)が入っているが、たしかに文字中心のタイトルが1937年初版のJ.R.R.トールキンのリバイバルしかないというのは淋しい。

フィリップ・ダウナー氏のようなコンサルタントは、紙の好調を一過性の現象と考えている。BookScanの英国General Retail Market統計によれば、印刷本は2007年の18億ポンドをピークに、2012年の10月に至るまで漸減している。昨年10月までの数字は、量で3.5%、金額で5.5%、前年を下回っていた(この数字は大型チェーン店と総合小売店の数字を反映)。専用E-ReaderについてもP-Bookと同様に考えており、カラーのタブレットが圧倒している現在、白黒のE-Readerは「感傷的な理由で」保有されるにすぎないと断じている。それならアプリが爆発的に売れてもよいはずだが、そうでもない。本誌は現世代の消費者が紙を選択肢から外すことは基本的にはないと考える(アプリなど、本とは異なるコンテンツを除く)。それは過去5年間の米国での経験からも明らかだ。結局、紙を「裏切る」のは消費者ではなく、出版社だろう。 (鎌田、01/03/2013)

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