米国人は紙の本を読まなくなるのか

米国人のメディア接触行動を社会調査的方法で継続的にウォッチしているNPOピュー・リサーチは12月27日、E-Book読書が16%から23%に7ポイント増加したのに対し、P-Bookは72%から67%へと5ポイント減ったという最新の年次調査結果を発表した(→リリース)。16歳以上の米国人2,252人を対象に、過去12ヵ月間に読んだものをインタビュー法で聞いたもので、誤差は±2.3%ポイントとされている。この数字は読者(市場)が全体としてデジタルに触れている印象を与えるが、まだその傾向はない。ただ本をたまにしか読まない人にもデバイスが普及していることは確かだろう。それはよいことだ。

全体としての「接書率」は78%から75%と(誤差範囲を考慮すれば)目立った変化はなかった。読書デバイスの普及は急速で、全体として2011年の18%から2012年末に33%に達した。iPadやKindle Fireのようなタブレットは2011年から10ポイント上がって25%。KindleやNookのような専用E-Readerも同じく9ポイント上がって19%となった。

「周辺」層にも電子読書デバイスが普及

これらの数字を見て、紙からデジタルに読者が移動しつつある印象を受けるかもしれないが、本を年に1冊以上読む約75%ほどの米国人の中で、中心的な読書層(年10冊以上)がどちらも読んでいることは確かだ。したがって、年に1冊読むかどうかの周辺的な層に読書デバイス(おそらくはタブレット)が浸透してきたというだけのことであると考えたほうがよいと思われる。膨大に存在する「たまには本でも」という周辺層は、ベストセラーを膨らませて出版社の赤字を一掃する力があるが、しょせんは「山の賑わい」であり、様々な理由から読書を「当然」視する「基層」が確りしたものでないと出版の幅と深さは支えられない。

過去12ヵ月に本を読んだ75%の読書量は単純平均が15冊で中央値は6冊(それ以上と以下が半々)である。内訳は以下となる。読まない25%と1冊の7%を合わせると人口の約3分の1くらいだ。タブレットはこの層にも浸透しているから、1冊くらいは買ってもおかしくない。本屋に出かけるよりは買いやすいからだ。紙の読書量の減少が問題になるとすれば、10冊以上読む27%、6冊以上読む42%の読書バランスが変化した場合だろう。同じ調査をぜひ日本でもやってほしいが、読書層はかなり痩せ細っていると推定される。

  • 0冊        25%
  • 1-5冊    33%
    • 1冊    7%
    • 2-3冊    14%
    • 4-5冊    12%
  • 6冊以上    42%
    • 6-10冊    15%
    • 11-20冊    13%
    • 21冊以上 14%

出版社が「たまには」の関心を買おうとして軽い本ばかり出せば、基層が風化し砂漠化する日本のような状態になる。基層を固めることを怠れば、そのうち誰も本には寄りつかなくなる。映画の多くは出版作品に依存し、出版作品は膨大な公刊・未公刊文献に依存する。出版はメディア全体を支えているわけだ。トールキン(1892-1973)は『ベーオウルフ』の研究者で、流行作家だったわけではない。時空を超えてベストセラーに登場するような作品は、普通はないのだが、普通でないものをどれだけ世に出せるかで出版事業の価値は決まるものだ。参考までに、さらに詳細なデータを紹介しておきたい (鎌田、01/03/2013)

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