「本好き」サイトは本好きを惹きつけるか (♥)

「本を知っている」プラットフォームを謳ったBookish (「本好き」の意)が2月4日にサービスを開始した。19の出版社からの200万点あまりのタイトルを、独自の検索・推奨機能とともに提供するこのサービスは、「本を見つけやすくするために、あらゆる手立てを尽くした」と標榜するだけあって、40万人に及ぶ著作者プロフィール、18の大分類による掲載全タイトルの紹介、Publishers Weeklyの書評等々。従来の新刊中心のストアとはひと味違うものとなっている。[全文=会員]

難航の末のスタート

アシェット、ペンギン、サイモン&シュスターの3/6大出版社から出資を受け、また「完全に独立」した7名の専門編集者がセレクションと書評を担当するこのサイトは、ストアというよりは大型の読書サイトという印象を与える。実際、読書欄(およびWebページ)に力を入れるUSA Today紙と提携し、コンテンツを共有している(もともとメディア・パートナーとしてAOL Huffington Post Media Groupと提携していたのだが、変更された。)印刷本とE-Bookの両方を扱うのも正統的だ。また「他の書店から売上を奪おうというのではなく、読者が本や著者と触れ合う機会を増やすことで市場を大きくする」とアンディ・カゼイCEOが述べているように、アマゾンやB&N、独立系書店の合同プロジェクトである IndieBoundなど、他のストアへのリンクも付けている。サイトは出版社その他からの広告も受け容れているが、ビジネスモデルは必ずしも明らかではない。

2010年の創業だが、違いを意識したためか、Bookishの立ち上げは2011年夏の予定から再三にわたって遅れた。昨年10月に引き継いだ現在のアンディ・カゼイCEOは、ハーパー・コリンズ社の電子メディア担当副社長でじつに3人目。遅れた理由は主に「データとメタデータの問題」だったと語っているが、もしこの純技術的問題だけが原因だとしたら、Bookishのシステムはかなり期待が持てそうだ。本の「見つかりやすさ/見つけやすさ (Discoverability)」は、絶版というものが事実上なくなる21世紀の出版において最大のテーマの一つであり、出版社の出版マーケティングや伝統的な図書館学 (Library Science)を超えたアプローチが必要とされているからだ。

「次に何を読むか」をサポート

読者にとって、欲しい本がある程度限定されている場合の検索はもちろんだが、それ以上に「次に何を読むか? (next read)」という問いに答える機能が必要とされる。次に「読むべき本」を提示するメディアの影響力が落ち、書店などで本に触れる機会が減れば、読書量は減ると考えられる。オンライン書店に数百万のタイトルが並んでいたとしても、選択肢が多いほど躊躇するのが消費者の常であり、だからこそアマゾンのシステム販売力が際立つわけだ。アマゾンに依存しない、本好きの、本好きによるシステムへの期待が集まるのは当然だろう。

Publishers Weekly (by Jim Milliot, 02/04)の記事によれば、Bookishの心臓部にあたる本の推奨機能は、MIT出身のカレン・サン氏 (Recommendations Data Scientist)を中心とするチームがデザインした。システムは対話的に機能する。ユーザーが好きな本を最大4点まで入力すると、本は様々な要素で分解され、推奨本を探す手掛かりとされる。ユーザーが気付かない「好み」や「癖」まで浮き上がらせるプロファイリング技術は、最新の「ビッグデータ」を応用したものだ。コンテンツの配信システムじたいは大手流通企業のBaker & Taylorによるものなので、Bookishの独自性はもっぱらこの推奨機能にある。いずれ試してみたい。 (鎌田、02/07/2013)

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