デジタルアーカイブの実験出版プロジェクト始動

文化庁は2月1日「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する実証実験」の一環として、国立国会図書館のデジタルアーカイブから13作品を電子書籍として提供する配信実験を開始した(→リリース)。紀伊國屋書店のサイト(Kinoppy)を通じて3月3日まで配信される。実験は、著作物に関わる権利処理や制作・流通を含めた総合的な実験として企画されており、利用状況の評価をもとに、将来、民間事業者や公的機関等が、既存のデジタル化資料をもとに事業化する場合のガイドを作成する。

対象となった13作品は、江戸時代中期の「絵本江戸紫」から昭和の「トツパンの写真絵本」まで、時代とジャンルを取り混ぜたもので、「各資料の特徴とバランスを考慮し、実証実験に適した8作品をもとに、文化庁で実施する〈現代日本文学の翻訳・普及事業〉の翻訳対象作品 5 作品を加えて選定」された。パソコンもしくはタブレットでの閲覧が推奨されており、iOS、Android、WindowsおよびMacのKinoppyアプリでダウンロードできる。

2月1日に配信されたのは以下。
(1)「繪本江戸紫」(1765/明和2年、浪花禿箒子著・石川豊信画)
(2)「平治物語〔絵巻〕」(第一軸:三条殿焼討巻)(1798/寛政10年 住吉内記写)
(3)  上田萬年訳(グリム原著)「おほかみ」(1889年/明治22 吉川半七)
(4)竹久夢二「コドモのスケッチ帖 動物園にて」(1912/明治 45 洛陽堂)
(5)芥川龍之介「羅生門」(1917年/大正6 阿蘭陀書房)
(6)芥川龍之介「河童」(1927/昭和 2 直筆原稿)
(7)酒井潔「エロエロ草紙」(1930/昭和 5 竹酔書房)

第2回配信予定(2月8日)
(8)柳田國男「遠野物語」(1910/明治 43 自費出版)
(9)夏目漱石「硝子戸の中」(1915/大正 4 岩波書店)
(10)永井荷風「腕くらべ」(1918/大正 7 新橋堂)
(11)宮澤賢治「春と修羅」(1924/大正 13 関根書店)
(12)宮澤賢治「四又の百合:宮澤賢治童話集」(1948/昭和 23 百華苑)
(13)「きしゃでんしゃ」(1953/昭和 28 トツパン)

明治から戦前までの、版権切れが明確な作品の初版本が中心で、青空文庫でも読むことが出来るものも少なくない。電子化において問題となる近代以前の書物だが、冊子の「江戸紫」はともかく、さすがに巻子本の「平治物語」となると、印刷本と同じ方法での「電子化」ではどうにもならない。スクロールが必要なのだが、本実験のスクロールは中途半端なもので読書体験としては貧弱だ。このスクロールの方法や実際に「読む」上での問題点について、今後検討がなされていくものと期待される。

近代以降の作品が初版あるいは草稿段階で読めるようになると、仮名遣いなど日本語としての表記が、いやでも意識されてくるだろう。これまでは文学研究者や編集者などの「プロ」が頭を悩ませていた問題で、日本語と表記についての議論が進むことが期待される。(鎌田、02/07/2013)

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