アマゾン出版が著者印税の支払サイトを短縮 (♥)

Amazon_publishingアマゾン出版は3月18日、著者エージェントへのメールにおいて、著者版権料の支払いを3月以降、3ヵ月毎から毎月に改定することを伝えた。「このデジタル時代に、支払いまで半年も待たなければならない理由はありません」とジェフ・ベル副社長は述べている。毎月の版権料は、当該月から60日以内に、毎月支払われる(1月分は3月31日まで)。自主出版者向けKDPプログラムの著者にはすでに月次の支払いを行っており、アマゾン出版もこれに合わせたものだ。この措置は出版社に対するプレッシャーを意味するだろう。紙の時代の慣習や常識はもはや通用しない。  [全文=会員]

著者=出版社の関係を変えるアマゾン・モデル

「常識」的に見るとごく当然なことのように思えるが、そうではない。というのは出版に関連する金のやり取りは、これまで紙の本を前提としていたからだ。紙の出版のサプライチェーンと決済サイトは非常に長く複雑なので、それを埋めるための様々なシステムがあり、同時に企業はそうしたシステムに最適化してきた。大型の書店チェーン、巨大出版グループなどは、この環境があって成立したものだ。しかし流通、販売、決済のプラットフォームを持ったアマゾンは、著者と読者をつなぐ最後のリンクである出版社を、最も少ない投資(出版編集のプロフェッショナル)だけで立ち上げ、短期間で軌道に乗せた。出版社が大企業である必要はないことを実証したのだ。

アマゾン出版が著者への支払いサイトを短縮することは簡単だが、他の出版社にとってはそうではない。ビジネスモデルが違うからだ。アマゾンの前に、大小出版社の格差は無意味化されつつある。このことから、大出版社の時代が終わり、著者の時代が始まったことを指摘する識者もいる (Mike Shazkin)。少なくとも、規模があまり意味を持たなくなったことは確かだ。大出版社はこれまで著者に対して強い交渉力を持ってきた。資金力、販売力、メディアへの影響力など、企画・編集以外の力で版権料を抑えてきた。アマゾンが著者側に立つことで、力のバランスは変わった。出版社も著者も、ともにアマゾンから支払いを受ける立場になったからだ。著者にとって大出版社は疎ましい存在になっている。

日本でも同じだが、印税で生活できる著者はごく僅かだ。米国では通常、出版社の支払いは年2回、書店への販売金額に応じて行われる。一般的にレートは25%(しかし卸販売額ベースなので概ね定価×部数の12.5%に近い)。たとえベストセラーに入っても収入になるのは半年以上先の話。だからこそ前渡金が重要になる。出版社は発行を絞り込み、ほぼ2年先までの出版計画を持っている。アマゾンはこの業界慣習を変えることで、著者を惹きつけようとしている。すでに2月の米国Kindleプラットフォーム上の販売額で、アマゾン出版は第5位に付けたことを明らかにしたが、70%あまりのシェアを持つこの土俵において、トップ3あるいはトップを目標にしている可能性が高い。(下の図は、Bloomberg/Business Weekの分析したアマゾン・ビジネスモデル)

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大出版社がこれまでやろうとしてきたことは、2012年までは抵抗(アマゾン・モデルの否認)。それ以後は模倣(アマゾン・モデルでの競争)だろう。しかしそれは著者との関係でいえば「譲歩」を意味する。紙と書店しかなかった時代は終わり、書店も紙もマイナーな存在となる時代が見えてきた。大出版社は、著者と消費者の両方に対して、自らの価値を証明する必要に迫られているが、彼らはこれまであまり意識することのなかった存在だ。著者=生産者は最も難しい相手だろう。コワモテも揉み手も通用しない。そのことは間もなく日本の出版社も知るようになるだろう。  (鎌田、03/20/2013)

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