漂流するB&N Nookビジネスの行方(♥)

B&Nは1月31で終了した第3四半期の業績発表を行ったが(→リリース)、事前予告通り、Nook事業が前年同期比26%減の大幅縮小(3億1,600万ドル)となり、損失は8,260万ドルから倍を超える1億9,040万ドルに拡大した。コンテンツは6.8%増。B&Nのストアの売上も10.3%減少したが、どうにか7%増の2億1,200万ドルのEBITDAを確保した。ウィリアム・リンチCEOは「Nook部門におけるコスト構造を適正水準にするために重要な措置をとる」こと、在庫処分のためのNookデバイスの償却を行うことを明らかにした。[全文=会員]

浸水が急速に進み、巨大書店チェーンにも維持不可能

数字を整理すると、四半期の連結売上は8.8%減の22億ドル、EBITDAは60%以上減って5,500万ドル。連結利益は5,200万ドルの黒字から610万ドルの赤字。これは1,500万ドルを投じたホリデーシーズンのNookの不振が理由とされている。これは12月時点でリファブ品(準新品)が多かったことから予想されていた。書店の赤字は不採算店舗の整理でコントロールできるが、四半期で1億ドルを超えたNookの損失はそうではない。それでどうなるか。創業者のレナード・リッジオ氏はNookを除いたB&NをMBOで取得し、上場を廃止する意向と伝えられる。デルやハインツに見られるように、最近の米国大企業は株式市場を嫌っている。

先日来噂の出ていた戦略の転換については認めたものの、詳細は明かさないままに「Nook Mediaは引き続き、タブレットとE-Readerにコミットを続ける」とした。リッジオ氏はB&NとNookが事業的に補完的関係にあることを強調している。しかしいま浸水を止めなければ船は沈んでしまうという危機感にとらわれていることは間違いない。Nookの存続は、パートナーのマイクロソフトと未知のデバイスベンダーにかかっている。

現時点で明らかなことは、AndroidベースのNook HDは廃棄し、Windows 8(あるいはそれにサムスンのGalaxy Tabを加えたもの)を中心にリーダ事業を維持するということだ。これによって開発、生産、メンテナンス、サポートの負担からは逃れられる。しかしそれでは済まない。マイクロソフトの関心は、オンラインメディア・ストアよりWindows 8にあるとみられるからだ。専用デバイスを持たないオンラインストアはマイナーな存在に落ち込むだろう。資金力のあるサムスンがAndroidデバイス事業を継承する場合には、Nookの生き残りの可能性が出てくる。オンラインストアのほうは、欧州のメディアグループが吸収することもあり得るだろう。

UI/UXの総合力が問われる時代

Nook HDはすばらしいデバイスだったようだが、無残な結果に終わったのは、サイトのUI/UXが貧弱で、連携も弱かったことだ。ユーザーはもはやストア+クラウド・サービスとのセットでしか評価しない。デバイスを優先すればiPadやNexus 7があり、サービスを優先すればKindle Fireがある。NookサイトのUI/UXが問題視されるのは、アマゾンとの差が拡大しているからだ。これはITマーケティングの能力に帰着する。例えNookの名を持ったデバイスが続いたとしても、ユーザーが他のストアに乗り換えるのは時間の問題だろう。

推定20%のシェアで60%台のアマゾンの二番手につけてきたNookの失速がもたらす影響はかなり大きいだろう。アマゾンは昨年70%増加したと発表し、Koboは143%増加したと発表した。業界全体の数字はまだ発表されていないが、10月までで46%増だったので、最終的に50%前後と思われる。B&Nのシェアが劇的に下がったことは間違いない。アップルやKoboがNookのシェアの大半を継承するとは考えにくい。出版業界のアマゾン依存が強まりそうだ。 (鎌田、03/01/2013)

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