バウカーのワンストップ変換サービスの裏側 (♥)

eBook-Conversion-Made-Easy世界最大の文献情報サービス企業であるバウカー社は、出版用ドキュメントの変換/保管サービスを提供するData Conversion Laboratory (DCL)と提携して、小規模出版社や自主出版を行う著作者を対象とした出版ソリューション、Bowker eBook Conversion ServicesをニューヨークのTOCで発表し、2月から提供開始した。米国のISBN発行機関としてのバウカーが力を入れている、小出版者向けのワンストップ・ソリューションの一環。しかしそこにはデジタル化の進行による出版インフラの地殻変動が反映されている。 [全文=会員]

小出版者支援はISBN防衛

Data-Conversion-Laboratory-DCL出版者はアマゾンKindle、アップルiPhone/iPad、Nook、Droid、Sony Readerなど多様なデバイスが必要とするフォーマットに向けたコンテンツを用意する必要があるが、DCLは、PDFからMobi/Kindle、EPUB (iBooks、Nook)での表示に最適なファイルを変換・生成する。中堅以上の出版社に対して提供してきたサービスで培った技術をもとに、廉価で提供するもの。価格はレイアウトの複雑度(低・中・高)、判型(15,24cm x 22.86/21.59cm x 27.94cm)によって異なる。中低レベルの複雑度であれば、各フォーマット$1.60/pageだが、Mobi+EPUBで$1.85/pageとなっている。250頁で中低レベルなら2フォーマットでも500ドル以下で収まる。高レベルとは、サイドバー、引用、表組、複数のリスト、Q&A、クイズなどを含むもの。外国語(仏伊西日がリストされている)もこれに入るようだ。

bowkerバウカー社は、2014年に米国で発行される書籍の半分はE-Bookが占めることになると予測しており、小規模/自主出版社によるISBN発行数の急増とともにファイルの変換・管理へのニーズが高まると考えている。これは公式の説明だが、バウカー社が小規模/自主出版社向けの「ワンストップ」サービスにこれほど熱心になる別の事情も考えておくべきだろう。それはISBNに至るチャネルを可能な限り利用しやすくするということだ。独占的立場に安住してきた大企業が個人にまでサービスする場合には、別の理由を考えてみるべきだろう。

アマゾンなどのプラットフォームは、自社のサービスに紐づける形の変換サービスを提供し、70%のロイヤルティとともに小規模出版者を囲い込む手段としている。バウカー社にとって問題なのは、それが“脱ISBN”に結びつくからだ。アマゾンは独自のID管理(Amazon Standard Identification Number, ASIN)を導入しており、アマゾンで済むのなら$125を払ってISBNを取得する必要はない。1冊2ドルのE-Bookには安くない値段だ。一定規模以上の商業出版社がすぐにISBN重視から転換することは考えられないが、出版物におけるISBNの地盤沈下は、文献情報サービスとしてのバウカーの凋落にもつながる。アマゾンが非ISBNドキュメントをコントロールすることになるからだ。ISBN無用論も出始めており、非ISBNの増加は制度としてのISBNの見通しも暗くしている。シングル・フォーマットの顧客はMobi/Kindleのみということになりやすいので、2フォーマットでも+$0.25/pageで対応するのも、アマゾンに依存しないよう支援する意味がある。 (鎌田、03/06/2013)

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