ISBN=国際標準図書番号はどこへ行くか

ISBN世界的に通用する本のIDはISBNというものがあり、氏素性を明らかにすることから商業出版物では必須とされてきた。この認証番号がないと扱わないストアも少なくない。しかしこのシステムが大いに揺らいでいる。デジタル時代になって出版者の数、出版物の数と形態が大きく様変わりし、これまで書店と図書館だけだったユーザーも変わってきたからだ。そもそも本のアイデンティティが揺らいでいる。

最近号のEconomistは「“ブックキーピング”:デジタル出版はまたひとつアナログ標準を葬るか」という記事を載せた(3/2)。タイトルのブックキーピングは一般的には簿記を指すが、これを本に懸けた洒落。簿記の世界にも、デジタルになってXBRLというXMLベースの国際標準が導入されたように、本のID管理に使われるISBNも…という意味がある。PublishingPerspectivesは、早速この記事を受けて「ISBNはお払い箱行きにすべきか?」というアンケートを実施し、読者に議論を促している(3/4)。下は本記事執筆時点の数字だが、修正派が46%、廃絶派が29%、維持派は25%となっている。出版関係者は維持ないし修正を望む人が多いはずだ。

ISBN英国で発明されたISBNは、1970年から世界150ヵ国あまりで使われてきた。純粋に民間ベースのもので、番号を発行するだけだが、各国の発行機関は手数料を徴収し、日本では図書コード管理センターが17,850円(10書名分)を得ている。インターネットのドメイン名登録のようで、なかなかいい商売だ。しかし、商業出版社を中心としたグーテンベルク出版が永遠に続くと思われた1960年代に発想されただけあってあまりに単純(安直)なつくりになっている。21世紀に入って慌てて10桁を13桁に増やしたりしたが追いつかなくなってきた。数だけなら桁数を増やすだけでいいが、本のアイデンティティが問われるようになると再設計が必要になってくる、メタデータやタグなどインターネット時代になって商業的価値を持ち始めたデータとの関係も考える必要がある。

番号を発行するだけでお金が入ってくる仕組みを考えた英国人の天才的悪知恵も、大きな批判にさらされ、代替システムが登場するに及んで、形勢は日に日に悪くなっている。以下は代表的な論点。

  • デジタル自主出版物の爆発的増加に対応できない。
  • 新しいコンテンツ・モデルを採用した代替システムが登場している。
  • 中国では(版権管理とともに)当局(GAPP)による出版の国家管理に使われている。
  • デジタル時代には簡単に、汎用的に使え、最も安いものが求められる。
  • Google BooksはISBNを必須としていない。
  • 様々なフォーマットやバージョンの扱いのルールがない。

代替システムとしてEconomistが列挙しているのは、Amazon Standard Identification Number (ASIN)、学術雑誌のDigital Object Identifiers (DOI)、ウォルマートのUniversal Product Code (UPC)、著者名をコード化する学術系の管理システムOpen Researcher and Contributor ID system (ORCID)などである。出版(知の公共空間)はグーテンベルク時代の出版人が考える以上に広大であり、インターネットのビッグバンで桁違いに複雑になっている。ISBNを(互換性を保ちつつ)再設計するか、あるいはゼロから始めるか、いずれにせよ、知の公共空間におけるコンテンツのIDを定義し直すことが必須になっている。(鎌田、03/07/2013)

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