「iPadでオライリーの本は読まない」謎

mode動物の表紙の情報技術書で知られるオライリー社は、DRMなしで多様なフォーマットのE-Bookを直販し、複数のダウンロードを認めることで、誰がどんな形で読んでいるかを把握しているが、同社のジョン・ウィルカート氏は最近、そうした読書習慣を示す興味深いデータ(相対比)を公開した。それによれば、PDFとコンピュータがなお最も重要なフォーマットとデバイスであることを示している。驚きは、iPadが主要なデバイスとしてはほとんど使われることなく、また補助的なものとしても低いことだ。

oreilly-ebook-formats-500x314オライリーは以前にも同様なデータを公開したことがあり(本誌2012年3月14日号)、傾向には大きな変化はない。オライリーの本の読者は、ほとんどすべての情報技術者と学生なので、コンピュータに貼りついている時間が長い技術系の人々が、技術書を読む場合のパターンを示していると考えてよいと思われる。これはなぜタブレット読書が学生に不人気なのか、そしてアマゾンがなぜ独自のPDFツール (Kindle Print Replica)を持っているかの理由を示している。(1)技術書は基本的にリフローには向かず、(2)EPUBの固定ページはまだ普及していない。また (3)技術者はほとんどの業務をマニュアルなどのPDFドキュメントとともに行っており、これに慣れている。その際には (4)ノート、メモ、引用などの操作ことも多い、ということだろう。技術書は「読む」本というよりは「使う」本だ。非PDFのE-Bookが技術書に必要な「使い勝手」を獲得するまではまだ時間がかかる。
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それにしても、iPadの“不人気”はどういうことだろう。機能的に優るところはないAndroid機の倍以上は普及していて、利用は4分の1あまりということは、iPadユーザーは、少なくとも技術書をこれで読むことを忌避しているとしか思えない。オライリーの読者は平均以上にiPadのヘビー・ユーザーは多いはずなのだ。ひとつ考えられるのは、iPadが(つい最近まで)9.7インチだけで軽くはなく、特に頑丈でもなく、高価だったことだが、上述した傾向が続くようだと別の理由を考えなければならないだろう。それは「iPadのUIが仕事向きではないため仕事に必要なUXを与えない」という可能性だ。結論を出すには材料が足りないが、可能性はある。OSがUNIX形になる前のMacも、デザインやDTPを除いて仕事には使われなかった。しろうとの仮説だが、人は生活において「モード」を切り分けたいと思っている。あるモードには特定のUIが対応する。アップルのデザイン思想は指向性が強い、ということだ。もしかするとアップルのUIデザインには、人を仕事から遠ざける(と思わせる)何かがあるのかも知れない。 (鎌田、03/21/2013)

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