ネット視聴サービス合法化で変わる米国TV業界 (♥)

Aereo_logoTVの放送映像をWebで録画/視聴できるAereoの「ストリーミングTV」サービスに対する差止め請求を審理していたニューヨークの米国連邦控訴審裁判所(デニー・チン裁判長)は4月1日、これを適法とする判断を下した(→判決書)。Aereoは1日1ドル、月8ドルでモバイル/インターネット・サービスが提供できるようになり、同時にチャンネルをパッケージ販売する現行の有料TVのビジネスモデルに打撃を与える。これはTVの歴史における新しい1ページを開くことになりそうだ。変化は目前に迫っている。[全文=会員]

著作権法の抜け穴突き、地裁に続いて2連勝

家庭等で受信したTV等の映像信号をLANないしインターネット経由で視聴するための機器としては、Slingboxをはじめ各種あるが、Aereoは遠隔動作する<テレビ+DVR+Slingbox>のようなもので、ユーザーはインターネットを通じて、番組をライブ録画/視聴可能となる。Aereoは「1契約者に1本のアンテナ」を提供し、これが個人用録画ツールであると主張していたが、放送業者は違法な再送信であるとして提訴していた。

Aereo2昨年のNY連邦地裁の判決でAereoは勝訴したが、法廷は過去のCablevisionのリモートDVRに対する判決を援用し、1人のユーザーに1本のコピー送信であれば問題なしとしたものだ。原告は「ミニ・アンテナを使ったAereoのサービスは著作権法を回避するための細工であり、実質的にライセンスなしで再送信を行うものだと反論して控訴。今回の判決(評決で2-1)で、法廷はあらためて、Aereoの契約者には個々の番組の受信・録画の操作を行う権利があることを認定したうえ、Aereoに放映権があるかどうか、著作権法の抜け穴を狙ったのかどうかは問題にならないとした。ミニ・アンテナについては「やらずもがなの“ルーブ・ゴールドバーグ”的仕掛け」と揶揄されたものの、裁判は完勝である。

伝統的ビジネスモデルの終焉と新たな競争の始まり

TV放送業界のビジネスモデルは、多くのチャンネルをセットにして顧客に売りつけ、独Antenna占を背景に値を上げていくというものだった。音楽におけるアップルiTunesのような圧倒的な仲介者がいないので、デジタル化の波からも守られてきた。Aereoが群小のスタートアップと違ったのは、メディアビジネスの投資家たちから潤沢な資金を得、トップレベルの弁護団を擁して法廷闘争に臨んだことだ。しかも衛星やケーブル企業が支払ってきた「再送信料」の支払いを拒否し、業界を仰天させた。高価なセットトップボックスや設置料、契約などを抜きに、ユーザーは1日1ドル、月8ドルで視聴ができる。現在のところ人気のスポーツチャンネルESPNなどはAereoで見られないが、Bloomberg TVが付いている。長期的には一般のTV視聴パターンが変わっていくことで大きな問題を生じる、とGigaOMは分析している(4/2)。業界がこれまで直面した最も強力な敵だろう。

Chet KanojiaAereoのチェット・カノージアCEO(写真左)は、現行のシステムを「人為的につくられた無道なシステム」と呼び代わりに「理に適ったパッケージ」を提供すると述べている。現在はまだニューヨーク市でしか提供されていないが、もちろん全米での提供を目指し、AT&T および Dish Networksとの提携交渉を行っている。今回の勝利は最終的なものではなく、最高裁まで行く可能性が強い。カリフォルニアの地裁は同種のサービスに関して違法の判決を下している。しかし、ニューヨークでの勝利で、Aereoは有利な地点に立った。法廷闘争は1、2年で決着するが、注目は高まり、消費者の支持がこの新サービスに向かうことは確実だからだ。

出版とTVはWeb化への抵抗の最も激しいところだったが、書籍は外堀が埋められ、TVは風前の灯だ。しかし、これは間違いなくこのメディアにとってはよいことだ。これまでサービスやビジネスモデルの革新が止まっていた業界だからだ。アップルやGoogle、アマゾンが重点的に研究開発してきた技術も、日の目を見るだろう。従来の流通を前提につくられてきた無用な技術は淘汰される。従来型のTV受像機もその一つだろう。 (鎌田、04/03/2013)

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