「能ある」アマゾンのQ1決算

amazon-pictureアマゾンは4月25日、13年第1四半期の業績を発表した。売上は22%増の160億7,000万ドル。前年同期の34%増と比べ12ポイント落ち込んでいる。経常利益は6%減の1億8,100万ドル。最終利益は37%減の8,200万ドルと、いつもながら紙のように薄い。第2四半期予想は、売上が145~162億ドル(13~26%)、利益は―3,400万ドルから+1,000万ドルとなっている。シアトルの社屋買収(14億ドル)、GoodReadsの買収、AWSの拡大と、とにかく人もカネも休ませない会社だ。

平凡な数字の裏でさらに破壊的なイノベーションを準備

kindletvこの会社の場合、利益のほとんどを、留保することなく短期~長期の成長のための投資に回す経営戦略をとっているので、注目点すべきは、(1)成長率とその内容、(2)実質的な利益率と戦略的投資の額、(3)コンテンツビジネス、クラウドビジネス、物販事業のそれぞれの中身、ということになる。投資筋の注目はもっぱら成長率だ。22%という成長率は前期(Q4-12)と同じだが、12年の通期成長率の27%より5ポイント落ちており、ウォール街の期待を下回った。株価も26日時点で7%ほど値を下げた。為替の影響を外した実質売上は24%増となるが、この会社としては平凡な数字だ。しかし、買収や投資は瞠目すべきものがあり、長期的な成長を確実にしている。

ベゾスCEOのステートメントには、いつものようなKindle関連のコメントはなく、代わりに「視聴者投票型」ビデオコンテンツ事業に言及した。自社のチーム (Amazon Studios) がPrime会員向けに制作するAmazon Originalsシリーズである。Primeには多くの“無償”コンテンツがパッケージされているが、アマゾンはそれによりむしろ購入が活発になっており、非会員より高い購入率を示していると説明している。しかし、Q1におけるコンテンツ事業の伸びはわずかで、7%増の50億ドルに留まった。アマゾンは独自のTVセットトップ・ボックスを発表すると言われており、Amazon Originalsはそのための布石と見られている (Business Week, 04/24)。

Q1のKindleおよびコンテンツ事業関係の動きは以下の通り。

  • 北米のメディア事業売上は14.4%増の25.1億ドル、海外は1.27%増の25.4億ドル
  • Kindleの無料貸出サービス (Kindle Owners’ Lending Library)の対象は30万点に拡大(自主出版の半数以上をカバー)
  • Kindle Fire HD 8.9" を英、独、仏、伊、西、日で発売
  • アマゾン出版が著者印税支払いをスピードアップし月払い制に
  • ソーシャル・リーディング(推薦エンジン)のGoodreadsを買収(金額不明)

不気味に拡大するアマゾンクラウド

amazon_cloud3詳細はふれないが、アマゾンが最も力を入れており、既存業界の脅威になりつつあるのがAmazon Web Services (AWS)だ。Q1でクラウドベースのデータウェアハウス・サービス Amazon Redshiftを立ち上げたが、これはビッグデータ管理を格安で可能にするもの。ほかにアプリケーション・ライフサイクル管理のAWS OpsWorks、フォーマットの異なる映像データの変換のためのAmazon Elastic Transcoder、セキュリティ管理のAWS CloudHSMをスタートさせたが、いずれもアマゾンの自社利用のために開発し、実証済みのサービスを外部へ提供するパターンだ。開発費用の一部を回収するとともに、顧客企業をエコシステムに組み込む同社ならではのスタイル。クラウドサービスではすでにトップシェアを築いているのだが、この価格破壊は大手IT企業にとっての脅威になっている(2006年以来、毎年価格引下げを実施)。サーバやシステムそのものを売っているITベンダーではあり得ない価格を武器にしており、このままではITビジネスの大規模な淘汰をみることは避けられないだろう。

メディアビジネスはシステム・プラットフォームを必要としている。コスト/パフォーマンスが圧倒的なアマゾンを避ける選択肢はあるだろうか。 (鎌田、04/30.2013)

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