コンテンツ産業活性化へ刺激策を模索するEU

EUUSFlagsEntw最近開催されたパリのブックフェア (Salon des Livres)では、デジタル化への軌道に乗った米国と対照的な欧州の現状が浮き彫りにされた。英国を除いたEU加盟国の多くでE-Bookの販売シェアは2%以下。2%を超えたのが1ヵ国だけという状態だ。アマゾンやKoboが参入した昨年後半から上向いているとはいえ、マンガを除いた日本と変わらない。デジタル化の遅れに対する危機感を深めている欧州委員会は、出版業界に期待するのではなく、より大きな環境整備を構想しているようだ。

ネリー・クルース欧州委員会副委員長は、以下のようにスピーチした。

「デジタルの登場をその産業にとっての脅威と考えている人々がいます。しかし、私にとって最大のリスクは、われわれの社会が新しい可能性の利用に失敗することです。私たちが未来を受け容れなければ、その産業は必ず立ち遅れ、この世界の中の、もっと前向きで活動的な地域、そして先を考え、未来を手にすることができる人たちに奪われていくでしょう。そうなれば私たちの経済も、人も、文化的遺産も衰退していくのです。」(The Inquirer, 03/26)

Neelie KloesECでは著者への課税システムの変更、DRMの解除、データ収集基盤などが検討されているようだ。「EPUBは一例ですが、ほとんどの読者は、どの国にいても自分たちの本にアクセスでき、好きなデバイスで読めるようになることを期待しています。もしヨーロッパの出版社たちがこの期待に応えようとしないならば、消費者は財布の口を緩めず、あるいはそうしたスケールを提供することができるアメリカの大企業に向かうでしょう。」

クルース副委員長は、E-Bookが普及しないのは紙の上に築かれたビジネスモデルに固執する出版社と書店のせいだと考えている。世界の5大出版グループの3つは欧州系であり、もちろん英語圏市場で起きていることに関与している。何が起きて、何が起きないのかも知っている。それでも動かないのは、(1)アマゾンと張り合える勝算がつかず、また (2)米国と比べてさらに「カタい本」の比重が大きいので、書店がそうした本をつねに提供し続ける限り、(3)消費者も読書習慣を変えないためであると考えられる。出版市場は日本のように15年も縮小を続けているわけではない。動かないことよりも動いた時の心配を先にするのは理解できる。

しかし、このままいけば、というよりすでに、出版の電子化の遅れが社会的・産業的・文化的な衰退につながっていることは間違いない。情報発信力が細れば、情報も人材も集まらなくなってくる。英語情報の優位はさらに強まり、英語読者は英語で用を足す機会が増える。グローバルな欧州系出版社から見ればすぐには困らないが、EUの制作担当者からすれば非常に困るということだろう。ECの政策は改めて検討してみたいが、主として独禁政策(価格の自由化)、著作者への支援、著作権制度改革、共通データ基盤などから構成されているようだ。筆者から見れば研究開発との連携、コンテンツ・ビジネスのビジョンが不足しているようだが、業界ばかり見て市場を見ていない日本政府よりは前向きだ。  (鎌田、04/04/2013)

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