サービニスCEO、Koboの現状と戦略を語る(2/2)♥

mike-serbinis-300x220「日本市場はむずかしい」と語ったサービニスCEOだが、最大市場の米国とともにこの国が難関であることは想定していたろう。Koboの戦略は、カナダから欧州へ展開し、次に人口規模と成長力の大きい新興国市場へ、タイミングを見て米国へ、という壮大かつ迂回的なアプローチだからだ。そのKoboに最大市場で大きなチャンスが訪れようとしている。 [全文=会員]

Kobo流グローバリズム

すこし間が空いてしまったが、サービニスCEOが語るKoboの世界戦略についての解説を続けたい。同社は人口の大半が米国国境から200km圏に住みながら、米国とは微妙な位置関係にあるカナダでスタートした。この市場は米国と同じ特性を持ちながら、心理的距離は意外と遠く、むしろヨーロッパに近い。プロスポーツでは米国とリーグを共有するが、書籍流通は別だ。Koboはまずカナダでトップの座を確保し、そこから欧州やアジアを目指した。最も競争が熾烈な(したがって物量戦となっている)米国に本気で取り組まなかったのは賢明だ。ソニーが停滞し、疲弊したB&Nが躊躇した欧州大陸でアマゾンと対抗できる地歩を得たのはビジネスプランの通りと思われる。

現在、190ヵ国でE-Bookを、20ヵ国以上でKoboリーダを販売している。紙の本で競合しない利点を生かし、フランスのFnac、英国のWHSmithといった大手書店との提携に成功し、さらに米国ではGoogleが撤退したインディーズ書店プログラムを継承する僥倖に恵まれた。二番手のB&NがNookを持て余し始めたこともあり、Koboに有利な形勢も生まれている。楽天という強力なバックを得て、新しいステージに足を踏み入れた。2013-14年のプランについて、サービニスCEOは、「現在、12ヵ国では地域パートナーを通じて販売し、全体では24ヵ国。来年には倍増できると思う」と述べている。しかし、重要なのは市場規模で、「今年注目している市場には10億人規模の人口がいる。」これは中国とインドを指したものと思われる。

これらを中心としたBRICSが次の重点市場であるということだ。「こうした大市場は、経験的に言って、大方の予想より早く進む場合もあればその逆もある。こちらが完全にコントロールできない要因に左右されるからだが、次のホリデーシーズンまでにこれらの国でスタートしていたい」。欧州では大手書店連合による共通プラットフォーム Tolinoが始まったが、これが脅威になるかどうか、という質問に、「経験的に言って、船頭の多いコンソーシアムが成功するのは難しい」と答えている。

米国市場で生まれたチャンス:Googleの撤退とNookの失速

欧州を固め、新興国市場で成長のエンジンを得る、という戦略はリーズナブルだが、米国のメディアにとってはあまり面白くもない。現在E-Book市場のデータが詳細にモニターされているのは米英の二国で、ここでのKoboはまだ存在感が薄い。サービニスCEOは米国の現状について率直に語る。「E-Bookの市場シェアでは一桁台の下のほう (low single digits)」。「当社にとっての最大市場と比べて、米国は5分の1から6分の1しかない。われわれが世界に出て国際的な事業展開の種を蒔いて育てたところでは、30%から50%のシェアを得る頃が出来た。米国よりは遥かに大きい。」

最初から米国での消耗戦を避けたKoboにとって、これはBordersがパートナーから消えた段階で想定された結果だ。米国ではマーケティング・コストをかけていないのだからダメージにもならない。米国で5%のシェアを得るためには、数億ドルかかっていた可能性は高い。サービニス氏は焦らずに時機を待つことが出来る経営者だ。しかし、そのタイミングはやってきたようだ。(1)Googleが放棄した書店協会(ABA)とのパートナーシップ、(2)二番手でアマゾンを追走していたB&N Nookの失速だ。ことによると、最小のコストで最大の成果を得られるかもしれない。

<以下は20:10に追加>

ABA書店とのパートナーシップは、もともとKoboの戦略に不可欠な要素であった。書店の顧客を背景としないストアがどれほど難しいかは、数億台の電書可読デバイスを売りながら10%そこそこのシェアしか持っていないアップルを見ても分かる。デバイスとクラウドのほかに、書店(の客)がデジタル時代のブックビジネスは動く。アマゾン以外に軌道に乗せることが出来たのは、有力な書店を背景にしていたB&NとKoboだけだ。Koboは当初米国の業界第2位の Borders と提携したのだが、Bordersが迷走した末に倒産したことで米国戦略は最初から躓いた。その後フランス、イタリアなどで、アマゾンを怖れる大手書店をパートナーとすることで、挑戦者の座席を確保したが、やはり米国だけはどうにもならなかった。Bordersに続くチェーンはBooks A Million (BAM)だが、かなり落ちる。Googleが独立系書店協会(ABA)とのプログラムを中途で放棄したことは棚ボタということになる。サービニスCEOによれば、すでに450店あまりがKoboを販売しているという。

しかし、Googleが放棄したのは思うようにいかなかったからで、この問題の解決がABAからKoboに委ねられたことは言うまでもない。おそらく課題は、(1)合理的な契約に基づいた書店との信頼関係、(2)消費者から見た、書店/Koboのシームレスなインタフェース、(3)機能させるまで試行錯誤を重ねる協調的運営体制、であると思われる。Googleはこれをやり切る人材や社内プロセスを持っていないので、失敗は目に見えていた。Koboはカナダと欧州で書店との提携を機能させているので条件はいいが、米国市場は世界一競争が厳しいので簡単ではない。

opportunityNookデバイス/事業を見直すとB&Nが表明したことは、米国市場に大きな波紋を投げかけた。先行きが示せないことですでに迷走状態に入っている。サービニスCEOもこれがチャンスであるという認識を示している。Nookがデバイスで失敗したことは確かだが、具体的にどこに問題があったのか、回復に何が必要かも分かっていない。もしかすると株主であるマイクロソフトが関係しているのかも知れない。

しかし、KindleにもKobo Readerにも問題はなく、依然としてこのビジネスではタブレットよりもE-Readerが重要であることは変わっていない。Koboにもリスクがあるのはもちろんだが、似たビジネスモデルをとるKoboにとって、Nookの失敗の原因はつかめている可能性が高い。最近Koboが出したハイエンドのE-Reader、Auraについて噂されていることは、これが元々Nookとして開発、発注され、キャンセルされたものだということだ。時期的に見て、その可能性は十分にある。Koboにとってスタイリッシュな新製品は米国市場で浮上するきっかけになる可能性がある。 (鎌田、04/25/2013)

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