アマゾンがファンフィク・プラットフォーム (♥)

Kindle_Worldsショートやシリアルなど、出版において革新的なカテゴリを開発しているアマゾン出版は5月22日、重要な市場に成長しつつあるファン・フィクションのプラットフォーム Kindle Worlds とライセンス出版プログラムを発表した。版権所有者からのライセンスを取得することで、ファンが容易に作品を発表、出版することが出来るようにするもの。6月には専用ポータル・サイトを開設するが、すでにVampire DiariesのL.J.スミスやワーナーなどからライセンスを取得している。[全文=会員]

原作品ごとにファンフィク出版可能な World を提供

Kindle Worldsは、Self-Service Submission Platform と称するポータルサイトで、本、TV番組、映画、コミック、音楽、ゲームで、KWが権利を所有する作品の 'World' をベースにしたストーリー(小説、中篇、短編)を提出することができる。アマゾンでは、Gossip GirlsPretty Little LiarsVampire Diariesについて版権を確保したとしている。応募者のために、個々にContent Guidelineが公開されており、これを満たすものは原則として採用されるとしている(ポルノなどは不可)。採択された作品はKindleプラットフォームを通じて公開される。価格は0.99~3.99ドル。版権料は、1万語以上の作品に対しては純売上の35%が月々支払われる。アマゾンは 'World' のライセンス提供者に対しても売上の一部を支払う。

印税計算のベースとなる純売上とは全小売収入のこと。通常出版社から著作者に支払われる印税が、出版社の実収入(ストアへの卸販売価格)に対するものであるのと比較して、かなり有利であることが強調されている。アマゾンは、Kindle Worldsの立ち上げ時のパイロット・プログラムとして5,000~10,000語(日本語400字詰で30~60枚相当)のショート作品を募集し、1ドル以下で販売するが、こちらの版権料は20%で、手数料の実費が相対的に多くなるためと説明されている。

Kindle Worldsへの提出作品の出版権はアマゾン出版と Kindle Worlds が所有することになる。つまり、これは自主出版ではなく、あくまで通常型の出版契約による出版だ。原著作権の所有者からライセンスを受ける以上は、完全に自由な出版というわけにはいかない。

 巨大な潜在市場を開拓するビジネスモデル

star trekファン・フィクションの起源は古く、時代を問わず「古典」としての地位を確立した作品には、多くのアマチュア作家のファン・フィクションが生まれる(左は最も繁栄したオリジナル作品『スター・トレック』)。日本では「同人誌」として独自の発達を遂げている。原作の所有者や原作者、原作の出版社から委任ないし認可される例は少ないので、ファンの間での共有あるいはアングラ出版として広がっている。出版社や版権エージェントもファン・フィクション市場を積極的に開拓してこなかった。しかし、自主出版を通じて、この市場はグラスルーツで広がり、ついに超ベストセラー『フィフティ・シェイズ』が生まれた。このグレーな市場に巨大な可能性があることを示した。アマゾンが目をつけたのは、自然と言える。原著作物に 'World' を設定し、二次使用のための条件を明確化することで、グレーな部分を取り除くという仕組みは、かなりよく出来ていると思われる。

Fifty_Shades2著作者の作品世界を護りながら第三者による拡張を可能とし、新しい商品価値によってステークホルダーのすべてが利益を得るという洗練されたビジネスモデルだ。たんなるアマチュアのファン向けというよりは、プロ(志望)の作家が利用することを想定してつくられていると考えてよい。アマゾンが二次著作物に関する排他的な出版権を「自然に」得るという点でもよく計算されている。人気TVドラマのためのストーリーは、そのままTV化、映画化することが出来る。アマゾンは自前のスタジオを設立しており、このプラットフォームを利用するための体制の構築を完了している。もちろん運用しだいだが、成功の可能性はかなり高い。'World' が拡張していくならば、あるいはその前に大手出版社も進出するだろう。 (鎌田、05/23/2013)

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