枯れ木に(次々と)花を咲かせる日替り特売

daily_deals再版の必要のないE-Bookは、既刊本を販売する機会を与える。しかし、カタログにあるだけではほとんど動かない。たまたま偶然が重なって売れることはあるのだが、それでは給料は貰えない。ということで、確率を高める戦略やテクニックの開発が進んでいる。ニューヨーク・タイムズは5月26日付ビジネス面の記事で、既刊E-Bookのマーケティング技法としての「日替り特売」について貴重な情報を伝えている。紹介しておこう。

KDD1998年に刊行された犯罪スリラー小説 “Gone, Baby, Gone” (by Dennis Lehane)は、1日20部程度しか売れなくなっていたが、アマゾンの日替り特売プログラムである Kindle Daily Deal  (KDD)で1.99ドル(通常価格$6.99から5ドルの値引き)の特価で販売された途端に、売上は1万3,071部に跳ね上がった。2万6,011ドルの売上で、前日の160.8ドルの約162倍にもなった。フラッシュ・セールと呼ばれるこうした手法は、すでにおなじみのものだが、本の世界では使われていなかった。「投げ売り」を連想させ、商品価値を毀損し、以後はまったく売れなくなると考えられていたためだ。そもそも日替りや一日限定特売を行う主体は書店だけだった。

オンライン通販の王者であるアマゾンはかねてからこの方法の有効性を知っており、事前DMキャンペーンの方法と手段を持っている。上述した本の場合は数十万人のリストに対して告知を行った。またB&NもNook Daily Findというプログラムを持っている。この場合でも、販売が瞬間的に上昇することが確認されている。それは書評の増加や著者のTV出演などと同様の効果を持つという。これに目をつけて、E-Bookのキャンペーン販売を主体にしたスタートアップ・ビジネスも生まれている。昨年設立されたBookBub.com は、アマゾン、アップル、Kobo、B&Nの日替り情報を提供している。

本質はハロー効果:日替りセールは「終わり」でなく始まり

haloNYタイムズはアマゾンKindleコンテンツ担当のラス・グランディネッティ副社長のコメントを紹介している。「1日1部程度しか動かなかった “1,000 Recordings to Hear Before You Die” という本は、KDDに載せた途端に、24時間以内に1万部を達成した。昨年12月のスティーブン・キングの “Under the Dome” (2009) の場合は3万部に達した。

成功例ばかりではなく、数百部程度で終わるものもある。しかし、誰もが気になるのは「その後どうなったか」ということだろう。ディスカウントした本も著者も「終わってしまう」のではないか、という懸念は、しかし無用なようだ。むしろ波及効果が尾をひき、同じ著者の他の本に及ぶという「ハロー効果」が出版社によって確認されている。それは特売によって一気に認知度を高めるということで実現される。埋もれていた良書、著者を発掘し告知するのに特売以上に効果的な方法はないらしい。この情報はあまりに重要なので、別に考えてみたい。 (鎌田、05/30/2013)

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