旧作自主出版でベストセラー・ランク入り

Freethy先週に続いて米国E-Bookベストセラーの動きをお伝えする。4月第4週のトップ10は、自主出版タイトルがさらに増えて5点となった(DBW, 04/30)。うち3点は1ドル($0.99)で、1点は有名な“ハイブリッド作家” バーバラ・フリーシー (Barbara Freethy)の再発売もの。出版社にとっては商品生命を終えたと思える作品でも、値付けによってはベストセラーにもなる。全体最適と部分最適の違い、ということだが、出版社にとってはさらに悩ましい問題だろう。

有名作家のハイブリッド・マネジメント戦略

前週の第1位 'Damaged' を書いたホリー・ウォードは“生粋”の自主出版作家だが、今週の注目は、“ハイブリッド作家” 。ペンギンやサイモン&シュスターの常連であるバーバラ・フリーシーのように、新作を書けば必ず大手出版社からオファーがある作家が自主出版を使う動機はいくつかあるが、旧作を出したいというケースは少なくない。10作以上も出版している作家としては、金銭的動機とは無関係に、絶版の旧作を読んでほしいのだが、新作を優先する出版社は旧作の再刊/電子化に乗り気でない場合が多い。出す場合でも、とにかく多くの読者に読んでほしい著者と、他の商品との横並びで価格を考える出版社とは出版方針をめぐって対立することもあるだろう。まして作家にとっては旧作も子供のようなものだ。ファンには全部を読めるようにしておきたい(2年前に話題になった五木寛之「電書個人全集」は、講談社の32点以外を含めて完結しただろうか)。

Freethy2フリーシーは旧作のE-Book廉価版や外国語版の出版に力を入れており、Facebook/Twitterも駆使して、すでに数百万部を販売している。今回1ドルで販売し、10位にランクされた 'Don’t Say a Word'(邦訳『なにも言わないで』二見文庫)は2005年に発売されたものだ。有名作家の旧作は十分な商品力を持っている。しかし売上を最大化する価格は10ドルではなく、自主出版物で選択されることが多い、1~4ドルということなのだろう。豊かな作家は読者を最大化する価格(1ドル)を選択する。それは最新作の販促にもなるからマーケティング的に言って合理的な判断だ。ハイブリッド作家は、こうして自主出版と大手出版社とを使い分けることで作家としての可能性を最大化する。

編集者の手が入り、出版社が販促した旧作を作家が自ら出版することに「違和感」を覚える関係者もいるだろう。しかし、著作権は著者に属し、出版社は明示的契約の範囲内で権利を行使できるというのが国際的ルールだ。こういう事態を怖れるからこそ、出版社は電子化を極力忌避してきたのかもしれないが、出版において版と紙が前提でなくなった現在、もはや力関係は根本的に変化した。米国ではデジタル化権を含めた出版契約の見直しが進んでいる。絶版にしたまま休眠させておくことなどもうできない。 (鎌田、05/01/2013)

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