教育系のクーリエ社が自主出版のFastPencilを買収

FastPencil創業200年に近い米国の出版・図書印刷サービス企業のクーリエ社(マサチューセッツ州ノース・チェルムズフォード)は4月30日、自主出版サービスのFastPencilを買収したと発表した(→リリース)。コンテンツ管理から印刷・製本まで一貫した技術・サービスを持ち、教育系出版に強いクーリエのグループに入ることで、FastPencil は強力な技術的、マーケティング的基盤を得ることになる。これまでメガヒットが生まれる小説ばかりが注目されてきたが、本来のロングテール分野は教育系こそ大きい。

既存ビジネスと自主出版プラットフォームの関係

自主出版は“社会現象”のほうに注目が集まっているが、それを支えているのはWebベースのサービス・ソリューションで、その戦略的重要性から(ベンチャー企業と並んで)多くの出版関連企業が進出している。大別すると

  • オンラインストア(タイトル/著者/読者の獲得)
  • 大手出版社(著者/読者の獲得)
  • 流通・印刷サービス企業(顧客・受注の獲得)

FastPencil_foundersに分けられる。FastPencilは、100万ドルのベンチャー資金を得て2009年にカリフォルニア州キャンベルで創業し、現在は約6万もの出版者と契約している。制作、コンテンツ管理、マーケティングまでの一貫したプラットフォームを有し、個人だけではなく、小出版社、一般企業も顧客にしている。B&NのNook Pressのための環境を提供しているように、システムはかなり堅固かつ柔軟なものだ。多様な顧客を相手とすれば競合も多くなり、投資も嵩んでくるので、より大きな資金を集めるか、それとも売却するかという判断に迫られるが、FastPencilは売却を選択した。(写真は創業者のマイケル・アシュリーとスティーブ・ウィルソン)

一方、クーリエ社は半端でなく旧い会社だが、とくに図書印刷とCMSで技術的、サービス的に強力な基盤を持ち、Courier Digital Solutionsは、教科書制作に特化したデジタル印刷サービスで全国的なシェアを持っている。また出版では有名なドーヴァー・ブックスを持っていて、大学に顧客が多い。このクーリエとFastPencilのシナジーは、例えば大学教授を中心に教育系の小部数出版で発揮されるだろう。日本でも小出版社が数多く活動している分野だ。ローリスク・ローリターンの教育・学術出版はロングテールの代表的なものだが、FastPencilのソリューションによって生産性が高まれば宝の山となるだろう。 ◆ (鎌田、05/01/2013)

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