Pottermoreが英国出版賞「デジタル戦略」で受賞

BIA英国の出版業界専門誌 The Bookseller が主催している Industry Awards (BIA)の デジタル戦略部門に『ハリー・ポッター』サイトの Pottermoreが選ばれた (FutureBook, 05/14)。コンテンツというよりテクノロジーとプラットフォームをどう独自のビジネスモデルに構築するかを評価したもので、読者コミュニティとの対話環境を意図したユニークな作家のサイトとして堂々の受賞となった。“脱出版社”時代の幕開けを告げるイベントかも知れない。

PottermoreBIA/Digital Strategy of the Yearの候補には、オライオン SF Gateway、Nosy Crow、ランダムハウス、ハーレクイン、ペンギン、ブルームズベリー、、そしてKoboがノミネートされていた。BIAの企画運営に関わっている作家のフィリップ・ジョーンズ氏は、「本を中心とした読者のコミュニティ」形成の戦略性に注目したもので、『ハリー・ポッター』ブランドではないという。授賞理由は概略以下の通り。

  1. アマゾンに匹敵する商用E-Bookプラットフォームを創造した。
  2. 独自の価格決定を行い、エージェンシー価格制が動揺する中でも維持した。
  3. DRMフリーのE-Bookを販売し、ビジネス上の有効性を実証した。
  4. 本というメディアを超えて『ハリー・ポッター』ブランドを拡張することに成功した。

BookOfSpellsもちろん、全世界に展開する読者とローリング女史の資力がものを言ったわけだが、それだけで成功するほど甘くはない。Pottermoreは、「読者重視」という明快なコンセプトを徹底し、作品世界に最適化した環境を、活字を超えたコンテンツに拡張していくことに成功した。これは先駆的な事業といる。多様なデバイスを利用しながら、DRMを外して読者との間に「プラットフォーム」が介在することを許さず、クレジットカードIDをガッチリと握った事業戦略は、持続的展開を可能とする。SCEロンドン・スタジオとの提携で制作したプレステ3用ゲームWonderbook: The Book of SpellsはAugmented Realityを応用したもので高く評価された。

『ハリー・ポッター』シリーズ電子版をどうやって売るのかということばかりに関心が行っていたが、堅固なビジネスモデルを短期間で構築稼働させ、見事にアマゾンをも出し抜いた(?)ことは、英国人として鼻が高いだろう。(鎌田、05/2013)

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