Tor-Forge Booksが脱DRMの合理性を実証

TorForgeLogoマクミラン・グループのTor-Forge Booksが、E-BookのDRMを撤廃する計画を発表して1年、実際に外したものが発売されて9ヵ月が経過したが、英国Tor Booksのジュリー・クリスプ編集長は4月25日のブログでこの試行の結果を報告し、DRMなしでも違法コピーに影響は見られなかったことを明らかにした。DRMの抑止効果が、事実として否定されたのは初めて。少なくとも「ふつう」の出版社にとってDRMが無用であることが明らかになったものと思われる。

「違法コピーの脅威」は大部分幻想

違法コピー(海賊版)の存在はE-Bookの登場とともに喧伝されており、オンラインストアには厳重なDRMを付けて販売することが要求されてきた反面、DRMには防止効果はなく、逆にストアによる読者管理の名分を与え、購入者にプラットフォーム(デバイス/クラウド)の選択を強いるなど、不自由を強いてきたとして批判されてきた。DRM解除ツールは海賊が提供しているので意識的な不法コピーには役に立たない。

piracy違法コピーがないわけではない。しかし大部分はポルノであって、それ以外のコンテンツがどのくらいの被害を受けているかを示す具体的なデータはない。一般的には、ジャンルによって、あるいは潜在的な読者数によって異なるのではないかと言われている。Tor-Forgeは、ジャンル・フィクションのブランドで、SF,歴史小説、ミステリなどを扱い、読者は複数のデジタル・デバイスを所有し、E-Bookを好むので、DRMは(著者/読者の両方から)嫌われている、といった特徴がある。9ヵ月あまりの間に違法コピーの増加をみなかったということは、少なくともこうした分野ではDRMを外すべき積極的理由があることが証明されたことになる。DRMのコストもばかにならない。

DRMクリスプ編集長は「読者の声に耳を傾けた出版社」となったことを自賛している。Tor-Forgeの決断がマクミラン・グループ全体、あるいは他の出版社にどんな影響を、いつ及ぼすことになるかは不明だが、年内にも広がるのではないかと思われる。選択肢は、DRM=読者の不便を軽くするか全廃するか、ジャンルを限定するか一律で全廃するか、といったものであろう。日本の出版業界の一部は、これまでE-Book=違法コピーという短絡で根拠なき恐怖心を煽り、出版社の法的権利の強化を通じて、国家権力の手による出版権保護を目指してきたように思われるが、これでは世界の趨勢からますます外れる。出版社の地位強化は、むしろ“脱DRM”と読者との結びつきという王道しかないことを認識すべきだろう。 (鎌田、05/01/2013)

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