マイクロソフト+Nookに未来はあるか (♥)

B&N_MSマイクロソフトがB&NからNook Media LLCを10億ドルで買収しようとしている、とTechCrunchが報じたのは5月8日のことだった。B&Nの株は急騰。同社の「内部文書」をもとにした報道だったが、当事者たちはコメントを拒否。代わりにInsider Monkeysという投資情報サイトが5月13日、その情報を「たんなる噂」とするMS筋の情報を伝えた。真偽はともかく、Nookの現状がかなり危機的であることは既報の通り。条件交渉が継続しているようだが、問題はシナジーが成立するかどうかということ。MSがWindows中心主義を捨てられないと、不幸な事態は避けられない。 [全文=会員]

テクノロジープラットフォームかブック・エコシステムか

それなりの情報源なので、火の無いところに煙は立たず、煙も真実の一部を伝えている、と考えるべきなのだろう。B&Nとマイクロソフトがコメントしないのは、少なくとも両社がステークを保有するNook Mediaの今後をめぐって交渉が継続しており、結論は確定していないものの方向はほぼ決まっているようだ。B&NがNookのデバイス事業を持ちきれなくなっていること、それを継承するのがマイクロソフトしかいないことだ。これまで両社の合弁の成果はWindows 8用のNookリーダだけで、Windows RTタブレットはNookにはまったく貢献していない。B&Nの創業者レナード・リッジオ氏は、店舗をMBOで取得する意思を表明している。

NookデバイスはAndroidベースで構築された。昨年暮の商戦で失速するまでは、E-Inkリーダもタブレットも15%あまりのシェアを持っており、優良顧客をベースにしたNookエコシステムは、米国内ではアマゾンに次ぐ存在である。しかしマイクロソフトから見れば、あまりにAndroidに依存していることが問題となる。NookとしてはAndroidデバイスのサポートは切るわけにはいかないし、NookタブレットはGoogle Playをサポートする。もちろんマイクロソフトは気に食わないだろう。TechCrunchの記事には、2014年末にNookタブレットを廃止し、E-Readerはさらに一定期間存続させるとしているが、ユーザーがWindowsデバイスに乗り換えてくれるかどうかは未知数だ。

Windowsマイクロソフトにとって、Nookエコシステムの魅力は、米国のE-Book市場で20%台のシェアを持つこと。そしてアップルよりは多いことだ。大学書店も強力だ。しかし、マージンの大きなアプリケーション市場に慣れている巨大企業にとって、金額的にはさして問題にならないとも言える。利益ゼロで拡大を続けるアマゾンなどはクレイジーに見えるかもしれない。あくまでWindowsのエコシステムを拡大する手段と考えている(人間が多数を占める)可能性は強い。

マイクロソフトが依然としてWindows中心の同心円的エコシステムに執着する限り、消費者から見て(デバイスに依存しない)アマゾンや(デバイスに魅力がある)アップルのエコシステムに及ばないだろう。マイクロソフトが買収に意味を持たせられるとすれば、標準(HTML+CSS+JS)ベースで次世代のドキュメント/メディア・プラットフォームを提供する場合だろう。衰退するWindowsプラットフォームを支えるためにNookを使おうとすれば、貴重なNookエコシステムを廃墟にしてしまうことになる。 (鎌田、05/16/2013)

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