B&N Nookタブレット撤退に続いて起こる事態

sinking_shipB&Nは6月25日、Nookタブレットの製造・販売から正式に撤退するとともに、パートナーシップ・モデルの下でカラー・タブレット市場にコミットしていくという方針を表明した(→リリース)。リーディング・プラットフォームと読書デバイス(Simple Touch/Glowlight)の生産は継続する。2013年の決算発表の中で述べたもので、前四半期に続くNook Media事業の危機的事態の中で、ひとまず株式市場を落ち着かせようとしたものだが、これで解決すると考える向きは皆無に近い。

B&N書店が前年比16%増の3億7,400万ドル、カレッジ・ストアが同4%減の1億1,100万ドルの利益(EBITDA)を上げたのに対し、Nookは4億7,500万ドルの損失を出した。紙の書店の利益を吹き飛ばす500億円あまりの損失は途方もない額だ。4月27日で終了した13年度(12年4月28日~)第4四半期は、売上が7.4%落ちて13億ドル、利益は1,22億ドルの純損失となった。通年では、売上が4.1%減の68億ドル、純損失が倍近くに膨らんで1億1,860万ドル。E-Bookとデジタルコンテンツは16.2%と、かろうじて増加。Nook事業全体では、4Q13が34%減の1億80万ドル、通期で16.8%増の7億7,600万ドル。4Qの減り方は壊滅的であり、単独企業なら倒産寸前だろう。

不振に陥った企業の弁明が素直に受け取られるかどうかは、(1)情報公開、(2)戦略の一貫性、(3)顧客と株主の尊重、など日ごろの行いが問題となる。B&N/Nookはそのどれにも当てはまらない。Barnes & Noble書店のほうは多くの顧客の支持を受けており、オンライン書店やNookが成功を収めたのもそのためだった。Nookはそうした愛書家の支持と期待を背に受けて上々の滑り出しだったのだが、ウィリアム・リンチCEOの能力には余った。技術的にもサービス的にも2010年型プラットフォームを進化させられず、ユーザーは不満を募らせていた。直接的にはNookタブレットの失敗だが、そう考える専門家は多くない。いまやNookを守っているのはDRMだけだ、と皮肉屋のネイト・ホフェルダー氏も言っている (DR, 6/25)。

Digital Book Worldのジェレミー・グリーンフィールド編集長によれば、選択肢は、

  • Nook Mediaの売却。すでにマイクロソフトが10億ドルで提案したと言われている。
  • B&Nは上場を廃止し、ニッチとしてのリアル書店事業に特化。Nookは当然売却。

の2つに収斂する、という (DBW, 06/25)。前者と後者の違いは、紙の本を扱うB&NおよびBN.comとの関係を残すかどうかだろう。結局のところ、E-Bookを多く購入するのは紙の本の読者なのであって、B&N=Nookの価値の大半を占めるB&Nのハイレベルな顧客を失えばNookは涸れる。それを理解しない買い手がついても、生存は難しいだろう。書店のほうは今期もしっかりと利益を出しており、創業オーナーの下でニッチとしての生存は可能である。ともかく、Nookの4Qの状態は壊滅的であり、リンチCEOがコントロール能力を失っているように見える。市場価値も急速に失われている。時間はあまりないだろう。(鎌田、06/27/2013)

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