サムスンはコンテンツに本格参入するか?

Samsung先週ニューヨークで開催されていた Book Expo Americaにサムスンが出展していたことがちょっとした話題となっている。Galaxy/Note でモバイルデバイス市場をリードしている同社は、Samsung Readers Hub というリーダを提供しており、新たに統合されるSamsung Appストアの本格的展開を準備しているものと考えられるのだ。現在のところ、リーダはタブレットを除くデバイス製品に標準装備されているが、本格的事業展開した場合の影響は少なくない。

Samsung_logoこれまでサムスンのコンテンツ事業には統一した戦略性が感じられなかった。2010-11年のGalaxy TabやS-IIの時から、メディア別のリーダ/プレーヤーに “- Hub”という名前を付けて提供していたので、文字通り統合する意図はあったのだろうが、個別的なものに止まり、アップルやアマゾン、Googleのような統合モールとアプリにはほど遠かった。中途半端なものでは、対抗できるわけはない。今年1月にEU市場向けにリリースした Readers Hub 2.0は、ePub2とPDFのほか、HTML 5 と EPUB 3をサポートしており、グローバル・コンテンツに対応する。新聞用リーダのPress Displayや雑誌用のZinioビューアも利用できる。つまり統合環境に一歩近づいたことになる。

ここでメディアサービスの統合環境について確認しておきたい。メディア・サービスには、インフラとして以下が必須である。

  • マルチデバイス環境:タブレット、スマートフォン、PC、TV向けブラウザ、コントローラ
  • クラウドサービス:コンテンツ/アプリ・ストア、開発支援、決済

デバイスを持っていることはなんら決め手にはならず、統合環境(主としてソフトウェア)がものを言う。TV/DVR中心主義に立脚する日本の家電メーカーの「戦略」が完敗したのはこの点で、モバイルを軽視したために、TVという戦艦に及ぶ以前の空中戦で勝負はついてしまった(ソニー、パナソニック)。サムスンはどうだろう。モバイルデバイスはあるが空母を持っていない。

readers-hubデバイス=コンテンツ事業の展開に向けて、Readers Hubとアプリストアを統合するのは当然だ。問題はそれに必要なクラウドサービスのインフラが構築できるか、そしてアマゾンに近いデジタル・マーケティングが可能かということだ。これらはブラウザよりはるかに大きなチャレンジだ。この戦略(の一端)を担う部門はどうもEUをベースにしているようだが、全体は見えてこない。現段階でサムスンがここにコミットする可能性もまだ明確ではないが、動機としては以下のようなことが考えられる。

  • モバイルとTVにおけるシェアを防衛=拡大するため
  • 「文」を神聖視する韓国企業として世界に威信を示す

後者は意外かもしれないが、サムスンは高麗大蔵経電子版プロジェクトを支援しており、文化戦略を前面に出してくる可能性もある。アップル(デザイン)、アマゾン(コマース)、Google(広告)という、それぞれコアコンピタンスを持つ三者に割り込むのは、デバイスとスタンダードな技術環境を持つだけでは不可能だからだ。 (鎌田、06/06/2013)

参考記事

 

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