ビジネスモデルとしての姿を現したKindle Worlds

Amazon-Kindle-Worlds-300x233アマゾン出版は、先月発表されたKindle Worldsを拡張するべく、2人の“ハイブリッド”作家(ブレイク・クラウチバリー・アイスラー)をはじめヒュー・ハウィニール・スティーブンソンさらに劇画出版社のヴァリアント(Valiant Comics)と5作品について契約したことを発表した。さらに多くの著作権者との契約を進めていくとしており、KWプラットフォームがファンフィク的自主出版の領域を超えて、大掛かりな出版ビジネスモデルに拡張していく方向が見えてきた。

Kindle Worldsはたんなる“ファンフィク”ではなかった

今回契約した作家、出版社の 'World' では、ファンフィクション(FF)的な一般公募はせず、プロの作家とのコラボレーションを想定しているという。これはKWが実質的にアマゾン出版の正規プランドとなることを意味している。いや重要なことは、アマゾンがノード(節点)となるストーリーの版権保有者とそれぞれの 'World' を中心に展開していく新しい出版ビジネスモデルを構築したということだ。つまり、'World' の価値を最大化することがマーケティングの課題となる。「最大化」の中には、映像化、ゲーム化、キャラクター・グッズ販売などが含まれる。もちろん、それを支えるコミュニティの維持拡大も重要だ。意欲的で、多彩な専門性を持ったスタッフによるチームが、課題にあたる。

これは単発の本は言うに及ばず、シリーズものや人気作家との独占契約と比べて効率がよい。二次著作権を独占することができるからだ。'World' のマシンがほんとうに原著者の期待する形での「最大化」に献身してくれる限り、このモデルは成功する。ハイリスク・ハイリターンのハリウッドとの力関係でも優位に立てる。5年後、10年後のメディアビジネスの風景は一変している可能性が高い。恐るべしアマゾン。

5月23日付の本誌記事(会員向け)で、筆者は 'World' について以下のように書いた。

著作者の作品世界を護りながら第三者による拡張を可能とし、新しい商品価値によってステークホルダーのすべてが応分の利益を得るという洗練されたビジネスモデルだ。たんなるアマチュアのファン向けというよりは、プロの作家が利用することを想定してつくられていると考えてよい。アマゾンが二次著作物に関する排他的な出版権を「自然に」得るという点でもよく計算されている。(「アマゾンがファンフィク・プラットフォーム」)

space stationビジネスとしての出版の本質は確率だ。ベンチャー・ファンドと同じく、有望でも成功確率の低い商品を一定数まとめて、全体として一定のROIを得る。規模が大きいほど管理はしやすいので「大手」ほど失敗は少なくなる。これまでの紙の出版では失敗のリスクは非常に大きかったので、出版の多様性を支えている、元気のいい小出版社ほど生存確率は低くなっていた。出来て間もないアマゾン出版は、確率にチャレンジし、これまではアマゾン本体のデータ・マーケティングとベテラン編集者という手堅い組合せで確実にヒットを稼いだが、一貫して追求してきたのは、シリーズ、コミュニティ、そしてマルチメディア化のためのインフラ構築だ。'World' はアマゾン的出版のプロトタイプを初めて垣間見せたものだ。

確率のばらつきを規模で管理するスタイルは遠からず終わるだろう。それは出版を無用に重苦しくしてきた。Kindle Worldsのビジネスモデルは、日本ではマンガの世界に最も有効だ、ということはすぐに理解されるだろう。遠からず、Worldsは日本にやってくる。二次著作者にも35%の印税を約束する魅力的な条件で。 (鎌田、06/26/2013)

Scroll Up