この時代に「紙だけ」というキング ‘Joyland’の選択

joyland-186x300ベストセラー作家のスティーブン・キングが、今度は「書店に足を運んでもらうために」6月4日発売の 'Joyland' (Hard Case Crime) を印刷版に限定したことは、ちょっとした話題となった。売上金額や読者数ではなく、読者の「書店体験」を重視したものだが、やはり注目されたのは、その結果どうなるか、とくに海賊版の登場とその影響だった。書店での売れ行きは(アマゾンを含めて)好調。そして予想通り海賊は数日で出現した。しかし、版元はまったく動じていない。違法コピーによる「損害」など無視しうるものということだ。

キングはE-Bookのパイオニアとして知られており、普及にも少なからず貢献した。デジタル・オンリーも試している。しかし、読者だけでなく書店も愛しており、フィクションで主流になりつつあるE-Bookへの流れを、いったん切ってみたい想いがあったと思われる。それはともかく、'Joyland'はすぐにアマゾンのベストセラーにランキングされ、また海賊版も The Pirate Bayなどの共有サイトに登場した。しかし、版元のハード・ケース社は気にしていない。海賊版はドラッグと同様に必然であり、取締も根絶することは出来ない。しかし市場は圧倒的多数のまともな消費者で支えられており、その点で被害は無視できるというのである。

tpblogo_sm_nyThe Pirate Bayにリストされているのは6点で、うち2点がオーディオブック。E-Bookのサイズが1.45~3.1MBなので、OCRでテキスト化してEPUB/PDFに成形したと思われる。もちろんタダである。海賊版が登場したのは、E-Book版がなかったということの結果だとも言える。固定ファンが多い有名作家の作品が紙でしか売られていないのであれば、必ず海賊版は現れる。ハリー・ポッターもそうだった。だからと言って出版社が動じないのは、影響が軽微か、あるいは皆無(宣伝効果と相殺される)であることを確信しているからだ。キングのような有名作家でさえそうなのであれば、ふつうの著作者や出版社が心配するようなことはない。周知のように、日本の出版社はまだかなりペーパー・オンリーを続けている。E-Bookにしないことがニュースになる米国とは対照的だ。 (鎌田、06/20/2013)

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