世界はどちらに向かっているのか?

zerosum大手コンサルティング会社 PricewaterhouseCoopers (PwC)は、6月5日に発表した年次レポートで、米国の一般商業出版市場において、2017年にE-Bookが印刷本を上回るという大胆な予測を披露した。150億ドルあまりの全体規模は変わらないまま、デジタルが現在の成長を維持し、その分紙が消えていくというラフな前提だが、根拠を明らかにしていない。最近 BookStatsで明らかになった事実を踏まえておらず、早くも批判が集まっている。書籍出版市場が成長することはなく、紙はフェイドアウトするもの、という「世間」の認識を示すものではある。

 最近では珍しい“カニバリズム”予想も根拠なし

pwc-nonsense-ebook-market-projectionPwCの "Global entertainment and media outlook"は、50ヵ国の13業種をウォッチして動向を分析するサービス。今回のレポートは教育・学術出版物を除く商業出版市場を扱っている。それによれば、E-Bookの市場規模は2017年に82億ドルに達し、市場(161億ドル)の半分を占めるという。出版市場は成長せず、ただデジタルに食われていくという見立てだ。2012年の市場規模については、BookStatsがE-Bookを30.4億ドル、全体を150.5億ドルとしているのに対し、PwCはそれぞれ33.5億ドルと152億ドルと見ている。2011-12年の成長率の判断も、6.9%と1.3%で大きく異なる。paidContentによれば、BookStatsのデータは2000社あまりの米国出版社の実データから推計したもので、PwCのそれば消費者の支出モデルから推計したものだ。違うのは当然と言えるが、ここは BookStatsが真実に近いと思われる。

crossroadsBookStatsによる限り、2008-2012年の5年間でE-Bookの登場が印刷本の販売に影響を与えたと考えることは困難だ。出版市場も成長しておりE-Bookが中心的役割を果たしている。印刷本市場は停滞しているものの、没落の兆候は認められない。今後5年でE-Bookが80億ドル(現在の日本の書籍小売市場の規模)に達すると想定することに異論はあまりないだろうが、その分紙の本が消えて出版市場はまったく変わらない、という想定は、根拠も示されておらず、問題にならない。こうした見方の根底にあるのは、本の市場が拡大することがないという思い込みだ。出版ビジネスが、こうした「世間」の見方を完全に覆すのにどのくらいの時間がかかるだろうか。 (鎌田、06/06/2013)

 

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