漂流するB&Nがリンチ船長を放棄

B&N_Nook2Nookタブレットからの撤退を発表したばかりのB&Nは7月8日、3年にわたって会社をリードしてきたウィリアム・リンチCEOの退任を発表した。円満退社の体裁をとってはいるが、4ヵ月前に契約を延長したばかりで、更迭とみられている。後任の発表はなく、当面はレナード・リッジオ会長(筆頭株主、創業者)の親政により、Nookと書店を直轄する。遅くとも9月までには Nookの新しい方向と体制が発表されるものと見られる。

米国最大の書店チェーン B&N において、リンチCEOは3年半にわたり、主としてデジタル事業の構築と運営にあたってきた。オンライン事業の経験が全くないB&Nにとって、通販サイトGift.comを成功させたリンチCEOの手腕は、転換期には効果的だったと思われる。通販とE-Bookを軌道に乗せた功績は大きいが、昨年後半からNook事業が暗転し、マイクロソフトとの提携も成果を見ないうちに巨額の赤字を計上するまでになり、見通しを得ないまま、タブレットからの撤退を余儀なくされた。結局、高コストのタブレットでの当初の成功が徒となり、動きの激しいこの市場を御しきれなかったことが損失を拡大させた原因と言えよう。

BillLynchB&N の二本柱というべき、書店事業とデジタルのうち、健全で安定しているのは書店のほうだ。売上は減少しておらず、キャッシュフローなど財務体質も健全。赤字店舗の整理だけで、長期的な持続性は十分と考えられている。他方で、Nook Media のほうは厳しいが、なお米国でアマゾンに続く第2位のシェアを維持していると考えられている。Koboの影はまだ薄く、ブームを逃したソニーは一般の視界の外にある。つまり、成長性がないと思われている書店が好調で、成長市場で好位置につけている Nookが危機的という「ねじれ」状態だ。しかし、2つの事業が同じ顧客を異なるフォーマットでフォローしており、完全に分離すればそれぞれに悪影響を及ぼす。たとえば、PoDは書店にあってこそ重要な意味を持つ。

この複雑な状況を解くパートナーはまだ見つかっていない(マイクロソフトは結果的にミスマッチだったようだ)。昨年CFOとして入社したマイケル・ヒューズビー氏が Nook Media LLCのCEO とB&Nの社長を兼任する。これに伴う異動も財務担当で、戦略/ビジョンを提供できる人材ではない。(鎌田、07/09/2013)

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