図書館利用情報を出版マーケティングに (♥)

smartsm_logo米国の書籍流通大手 Baker & Taylor(ノース・カロライナ州シャーロット)は7月22日、同社が提供する図書館向け書籍管理ソリューション collectionHQを使って公共図書館での貸出動向データを出版社に提供するWebベースのツールセット circPoint 発表した。定期購読型のサービスとして提供される。小売データと同様に、図書館での貸出利用のデータが利用可能となることで、ブック・マーケティングにおける図書館の役割も正確に理解されるだろう。[全文=会員]

蔵書管理システムからマーケティング・データを抽出

collectionHQ は印刷本とE-Bookの両方を対象とし、蔵書管理を利用者のニーズに対して最適化するためのシステムだが、circPoint はそこから出版社が必要とするマーケティング・データを得るためのもの。全米の公共図書館システムの上位55から情報を取得し、著者、標題、主題 (BISAC)、ISBN、出版社、地域別に集計して、読者数の上昇と下降の傾向を知ることができる。データは全米250以上の公共図書館(4,000以上の支所を含む)から得られる。

circPoint-Graph5出版社と図書館の新しい関係を媒介するデータサービス

図書館の利用情報がマーケティングに利用できることは、本のマーケティングにおいてかなり画期的な意味を持つことになると思われる。小売データ情報は Nielsen BookScan で詳細を知ることが出来たが、図書館情報と重ねることで、両者の相関、紙とデジタルの比率の差や傾向、キャンペーンの効果などを立体的に知ることが可能となる。米国における図書館利用者は、近年の調査によって、平均的には所得層も高く、本の活発な消費者(つまり出版市場としてもコアな部分)であることが判明している。つまり以下のような点である。

  • 図書館利用者は多くの本を借り出すと同時に多くの本を購入する最も重要な顧客層であり、
  • 図書館で借りられなかった本、あるいは借りた本を購入することも少なくない
  • SNSを通じてのレビューなど、情報発信も活発で、バイラル効果も高い
  • 図書館は書店と並んで(あるいはそれ以上に)ショールームとしての役割を果たしている

New-York-Public-Library-300x218これまで市場としての図書館を無視できる大手出版社にとって、図書館は無料で不特定多数に読書機会を提供する好ましからざる(あるいは必要悪的な)存在であるとも見られてきたのだが、むしろ出版産業のインフラとして貴重な存在であると見られ始めているのである。circPoint は正確なデータを提供することで、図書館との戦略的パートナーシップの構築に導くことが期待される。出版はベストセラー本しか買わないような(つまりめったに買うことはない)人よりは、好奇心旺盛で、読書や入手活動の範囲を広げる傾向を持つ、相対的には少数の人によって支えられている。近い将来、小売データと図書館データ、SNSデータの相関を説明できるモデルが開発・共有されることが期待される。 (鎌田、07/23/2013)

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