成長しグローバル化するショート・コンテンツ市場

51sYtfwWe-L._AA160_ショート・コンテンツは、アマゾン Kindle Singles が定義し、開拓したことで重要なフォーマットの一つに成長しつつあるが、米国の専門メディア Thin Reads は、KSの今年Q2の出版点数が96点となり、Q1に比べて18%増加したことを明らかにした。内訳ではノン・フィクションが50点、フィクションが46点だった。Singles のシリーズは、膨大なE-Bookコンテンツの大河の中の1滴というほどのものだが、2011年の立上げ以来450万以上のダウンロードを達成している。

量より質で新フォーマット市場を開拓

Kindle Singles は、量より質を重視し、慎重に育てている。4-6月は著名な著者による最初の作品が多かった。出版社もこれを規範として、良質のコンテンツを提供している。Thin Reads のハワード・ポルスキン編集長は「E-Bookシングル・フォームの急速な台頭は、長文ジャーナリズムと短編作法の復興につながるだろう」と述べている。最近出た 'The Battle of $9.99' (『$9.99の攻防』=写真)は、E-Book価格戦争をレポートしたPublishers Weekly のジャーナリスト (Andrew Albanese)の30ページほどの書き下ろし。雑誌に長く、本には短いが、書き/読むにはちょうど良いというサイズだ。

logo_1362149750Thin Reads は今年4月に立ち上げたばかりだが、2010年以降に発行されたショート刊行物700点あまりをデータベース化し、傾向を分析している。それによると、参入している出版社(新聞や雑誌などを含む)は150あまりで、タイトルの54%はオリジナル。他のフォーマットからの“シングルカット” (Encore)は12%。増補改訂 (Encore+)は2%となっている。全体の7割近くはノンフィクションで、フィクションは31%だ。短編小説はかなり廃れてしまっているので、今後育っていくのが楽しみだ。

ショート・コンテンツは、翻訳が比較的容易で国際展開にも有利だ。日本文学は短編が数多く翻訳されて読者を得たことが想起される。アマゾンは7月3日、Kindle Singles のストアをドイツに開設した。最初のカタログ・ストックは417点。価格は€.99~€2.99。ドイツ語は50点ほどで残りは英語。しかし、ドイツの出版社から人材を得て、オリジナル出版を計画している。アマゾンとしては、主要市場にストアと出版機能を配置し、相互に翻訳して市場拡大を目指していくものと見られる。

ジャンル・フィクションでもそうだが、アマゾンの出版アプローチは、精密な設計の下に、量ったように正確に、成果を確認しながら進めていく。それはそのままマニュアル化できるほどなので、大手出版社も1年遅れでフォローしていくことになる。アマゾンが新しいアプローチを立ち上げる時には、当然のように出版社から人材を得ており、逆に出版社がアマゾンの実証済みの手法を導入する際にも、アマゾンから人材の還流が行われている。欧米出版のデジタル・シフトが短期間に進んでいるのは、新しいモデルの開発と普及を担う人材市場が活性化していることが大きい。 (鎌田、07/03/2013)

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