アマゾンの弱点はどこにあるか?:4つの可能性

gorillaアップルが司法判断によってビジネスモデルを否認され、B&N/Nookのデジタル戦略が破綻した今、アマゾンは無敵の存在となったように見える。果たして弱点はあるか? とは多くの人が抱く疑問だろう。とくにかつて無敵だったマイクロソフトが落日を見ようとしている現在、鉄壁にも見えるこの21世紀型ロジスティクス企業のどこにアキレス腱があるかを考えることは、この10年のテクノロジー・マネジメントの中心テーマであり続ける可能性が高い。

4つの弱点

本誌もこのテーマとは継続的に取り組んでいくつもりなのだが、txtr や Skype、Gate 5 (現在のNokia Maps)など数々のメディア・ベンチャーに関わり、現在は英国で Jellybooks というデジタルサービスを立ち上げているアンドリュー・ロームバーグ氏が、 Digital Book World (7/23) に4つの可能性を欠いて注目されている。

weakness2ロームバーグ氏は、アマゾンが、かつて米国書籍小売業界で言われた“800ポンドゴリラ”から、世界で破壊的な力を発揮する“ゴジラ”に成長したと述べ、米国でE-Bookの70-80%、紙を含めてオンラインで販売される書籍の50%あまりのシェアを持ち、米国以外でもトップシェアを制しつつあるアマゾンの強さを、(1)品揃えと価格に対する消費者の支持、(2)決済における信頼性、(3)Kindleとマルチデバイス環境の両立、の3点に見ている。そして「GoogleはOSでマイクロソフトに勝ちしにあらず。Facebookは検索エンジンでGoogleに勝ちしにあらず。」というシリコンバレーの格言になぞらえ、アマゾンに勝つ者はコマース・プラットフォームではないだろうと述べている。この見方は誰もが同意せざるを得ない。

しかし、ITにおけるは本質的に長続きしないものだし、そうなった例はない。そしてアマゾンの優位はすでに久しい。ロームバーグ氏は以下の4つを挙げる。

  1. ソーシャルメディアにおける苦戦
  2. 変化を嫌う既存ユーザーの存在
  3. 癖になるほど熱心なファンの不在
  4. 秘密主義/情報の出し惜しみ

信者を持たず、弱点を意識しているうちは無敵

以下は筆者のコメント:
たしかにソーシャルメディアについては、最近 Goodreadsを買収したことが知られ、またFacebookがアマゾンを脅かす可能性もある。しかし、本誌ではアマソンは「ソーシャル」に関して、十分に慎重なアプローチを行っていると考えている。社会は重層的かつ多態的な、強くも弱くもあるつながりなので、一つの巨大なプラットフォームがビジネスにおいて支配的な力を持つことはない。3つのソーシャルリーディング・サイトと異なった関係を保持しているアマゾンは、そう考えていることを示している。

amazon_cat2は広義のユーザーインタフェースの問題。最大多数の最大利便を志向してきたアマゾンのUIは、PCからモバイルへの転換にも(大変なプロジェクトだったが)成功した。しかし、UI技術はまだ革新の余地が大きいし、アマゾンがフォローしていなかったUI技術がプラットフォーム化して多様なビジネスモデルのハブになる可能性はある。ただ、「ユーザーの嗜好・ニーズ」の検出と最適化に関するアマゾンの研究開発とデータ・経験の蓄積は、どのライバルに比べても大きく、たいていのベンチャーの技術やアイデアはカバーしている。それにどんな技術にせよアマゾンにおいて最大の価値を実現する可能性が大きいので、成功すればアマゾンが買収しようとするだろう。

熱心なファンの不在とは、いくらオチてもユーザーがTwitterから離れなかったような愛着を、アマゾンが得てはいないということだが、筆者が見るところ、これがアマゾンの強味でもあると思う。愛されるほどに人は傲慢になるものだから。ユーザーによるエンゲージメントは、アマゾンにとっても目標とされているが、価格と利便性に基づく打算的関係が基本であることを忘れるほうが危険だと思う。いまのところ、アマゾンが自己認識を誤っている可能性はない。

ステークホルダーへの「情報の出し惜しみ」は、単純に言って、アマゾンがそのビジネスモデルのパフォーマンスを取引相手やライバルに知られたくないことを示している。最も多くの情報を握っている企業なので、競争上の優位に自信があれば出せる情報は多くなるはずだが、取引相手との関係では、ライバルがいないなら多くは出したくない。結局、ライバルとの競争と取引相手/ユーザーからの圧力だけが情報共有を拡大する圧力となるだろう。情報の共有が停滞すれば、長期的なビジネスの拡大発展の機会は奪われる。逆にアマゾン以外での成長余地が拡大する。したがってこれは最大の脅威であり弱点と言えるだろう。

以上から言えることは、短期的にアマゾンの重大な弱点は存在しないということだ。しかし、そうした状態が続いて関係者が無感覚になると、それが最大の脅威になることは間違いない。ITのようなシステム優位の世界では、ジョブズやベゾスのような超人でないと、人間の心理と組織の力学は超えられない可能性が強いからだ。  (鎌田、07/28/2013)

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