「ショールーム化」批判は書店の現実逃避 (♥)

UK_BA英国の独立系書籍商の団体である Booksellers Association は、書店業支援のための年次イベントである Independent Booksellers Week 2013 に合わせ、5-6月に実施した消費者調査の結果を公表した。リアル書店で購入する消費者の80%以上はオンライン書店も同様に利用していると回答し、逆もそれに近かった。7割近くが、書店は新しく本を見つけるのにベストと評価、66%は「購入する前には手に取ってみる」ことを習慣化している。では書店は強いのか弱いのか。[全文=会員]

消費者は書店をどう見ているか

どこの国でも、街の書店は本を買う人から評価されている。多くの本を陳列することで、実物から中身を見極め、買いたい本を見つけることができる。オンライン書店の「立ち読み」機能でも完全には代替できない。とくに高い本ほどモノとしての「価値」が気になるから、本好きほど書店は欠かせないだろう。しかし、これは「程度」の問題であり、オンライン(紙、E-Book)との価格差と、書店が提供する買い物の楽しみとのバランスを評価する人によって違ってくるだろう。そして書店に足を運ぶ習慣は意外と脆かったりもする。

BAの調査は Censuswide を通じて実施し、2,045人から回答を得たもので、いわゆる「ショールーム化」など、書店が懸念する問題についても質問している点で興味深いものとなった。書店は、リアル書店で手に取った本をその場で買わずにオンラインで買う顧客が「罪悪感」を持つべきだと考えている。価格を比較するのは消費者の権利で、店主としても、日常生活においては安いほうを選ぶのが賢明であるとする「常識」を持ち合わせているはずなのだが、本は特別だという確信のようなものがあるのだろうか。

BA-Book-Survey-2013

BAは、書店から見て理想的な考えに対する同意(不同意)の度合いを4段階で聞いている。最初の4問は9割近くが同意しており、異論は少ない。そして書店が減ってきたという実感は誰もが持っているようだ。6~9問は不同意が3~4割。9問はかなり政治的な問題で、自国に納税して高い書店と、外国の安いオンライン書店の好悪を聞いたもの。これはほぼ2分している。書店もあまり期待していない(?)と思われる問10(書店でE-Book)には、肯定的な答が4割近くあるのが注目される。ちなみに英国BAは、米国ABAの働きかけもあり、Koboと提携してE-Book販売プログラムを推進している。

1) 贈答用の本を見つけるには書店が一番だと思う
2) 中心街に書店があることは、地域を魅力的にすると思う。
3) 書店は新しく本を見つけるのに最良の場所だと思う。
4) 本を買う前には、手に取って眺めてみられるほうがいい。
5) 5年前に比べると書店の数は確実に減ってきたと思う。
6) 子供に買ってやる本は、オンラインではなく書店で買いたい。
7) 地域の書店で買い物をすると、コミュニティの一体感を感じる
8) 買おうと決めていたわけではない本を書店で買うことがよくある。
9) 一部のオンライン書店への課税問題を知って、買う気がしなくなった。
10) 書店でE-Bookを購入することがある(将来買おうと思う)。

ショールーム化に“罪悪感”を求めるか!?

「罪悪感」については、5つの年齢区分(16-24、25-34、35-44、45-54、55+)で、a.「いつも感じる」b.「書店の規模その他による」c.「感じない」の三択で回答を得ている。おもしろいのは、若年層で4割あった c.が年齢とともに 6割に達し、逆にa.が2割強から1割弱に減少していること。書店は b.が多いことを期待しているだろうが、金銭の価値を知り、生活に責任のある世代ほどドライになるのは十分に理解できる。やはり「罪悪感」は傾向的に消失していく方向にあると思われる。

BA-Book-Buying-Survey-showrooming-guilt

書店から見たら、アマゾンなどのオンライン書店は、店舗を持たず(高い家賃も払わず)、販売員も置かず、高い国内課税を回避できる、楽な商売に見えるのだろう。これが真実からほど遠いことは、アマゾンの超低い利益率、BookLiveの苦しい数字(売上12億円、赤字40億円)が物語っている。楽な商売などないのである。店舗があってさえ客が来ないのに、オンラインで集客するのはデジタル・マーケティングの改善努力しかないし、そのためには高給を払っても「販売員」の確保は不可欠だ。何より、オンラインにおいて販売は終わりではなく、配送と次の販売への「通過点」に過ぎないことが重要なのだが、書店関係者にはあまりその認識がない。

そもそも、書店をショールームとして利用して、いくらか安い値を付けただけでオンライン書店が成り立つものなら「立ち読み機能」を用意する必要はない。オンライン書店は、客がなるべく「長居」してくれるように配慮する。アマゾンは、立ち読みを嫌う日本の書店ではなく、もともと居心地の良かった欧米の書店と対抗するべく、最大限の投資を行ってきた。その結果、仮想ショールーム(立ち読み)の環境としてもかなりのものとなっている。「ショールーム化」は誇張されている。あちこち足を運んで値切ったり、値札を比べたりするのが日常的な市場活動であるならば、リアルとオンラインの間にだけ使われる「ショールーム化」という言葉ほど、問題の本質から目を背けるものはないだろう。

来店した顧客をなぜ逃してきたのか? なぜ顧客にとって有利となる販売モデルを考案しないのか? そしてなぜアマゾンのアフィリエイトを収益機会として利用しないのか? 書店のビジネスモデルは時代とともに変化する。かつて英国で流通の中心にいた貸本業はペーパーバックの登場で消滅した。現代の貸本業たるオンライン書店は、顧客と直結する新しいビジネスモデルで書店を脅かしている。調査にもあるように、人々は書店の価値を認めているが、だからと言って節約を断念するほどではない。消費者の“罪悪感”に期待し、著者にアマゾン・ボタンを外させるよりは、前向きなビジネスモデルを実験すべき時だろう。(鎌田、07/18/2013)

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